Dance and Media 2003
2003/04/07-04/20



scanned V
[QUICK TIME]


主催:
東京ドイツ文化センター
ブリティッシュ・カウンシル
東京日仏学院
イスラエル大使館
Dance and Media Japan

会場協力:
豊島区区旧千川小学校利用者協議会
スパイラル

協力:
アートネットワークジャパン
株式会社ボール
日本ビクター株式会社
株式会社アクセス・ワン
intermedia performace unit nest




>クリスティアン・ツィーグラー
http://www.movingimages.de/

>石山雄三(nest)
http://www.nestv.com

>「ISADORA」の購入・ダウンロード
http://www.troikatronix.com/



クリスティアン・ツィーグラー レクチャー&デモンストレーション
「Improvisation Technologies」から「scanned V」まで


[会場] スパイラルホール 通訳つき
[開演時間] 2003年4月20日(日)18:30〜(開場30分前)
[料金] 1,500円

ドイツが発信するダンス&インスタレーションの先鋭、クリスティアン・ツィーグラーによるmax/msp、nato、jitterのプログラム・デモンストレーション、その演出効果を紹介。これまでの彼の作品や前日まで豊島区旧千川小学校にて行われるダンス映像のワークショップ「クリスティアン・ツィーグラー real time presence−ダンスと映像の関係性を模索し、プレゼンテーションまで行うワークショップ」のレポートを題材に見ながら、そのクリエティブな発想が体験できます。デモンストレーションでは、常に新しいメディアとダンスの関係を探るパフォーマンスユニットNEST主宰の石山雄三が特別出演。


ドイツが発信するダンス&インスタレーションの先鋭、クリスティアン・ツィーグラーによるmax/msp、nato、jitterのプログラム・デモンストレーション、その演出効果を紹介。これまでの彼の作品や前日まで豊島区旧千川小学校にて行われるダンス映像のワークショップ「クリスティアン・ツィーグラー real time presence−ダンスと映像の関係性を模索し、プレゼンテーションまで行うワークショップ」のレポートを題材に見ながら、そのクリエティブな発想が体験できます。デモンストレーションでは、常に新しいメディアとダンスの関係を探るパフォーマンスユニットNEST主宰の石山雄三が特別出演。
クリスティアン・ツィーグラーは、1993年より、カールスルーエのZKM(メディア・アート・センター)のウィリアム・フォーサイスのCD-ROM ” Improvisation Technologies. A Tool for the Analytical Dance Eye.”の制作に深く関わり、現在はゲスト・アーティストとして、ダンスと運動のためのメディア環境プロジェクトscanned I-V を手がけています。
インタラクティブ・ディレクションを行うツィーグラー氏の機材は、MAC、DVCameraのみというシンプルな構成。
スパイラルホール壁一面に映し出された映像。作品の中で、音と映像がリアルタイムに生成されていきます。ここで、 ウィリアム・フォーサイスのCD-ROM ” Improvisation Technologies. A Tool for the Analytical Dance Eye.”を再生しながらのレクチャー。
さらに、野村万歳の登場するDVD-ROM"That's Kyogen!"を紹介。
NEST主宰・石山雄三氏とのコラボレーション。
「BodySense (scene 2)」が再演されました。正面のDVカメラで撮影したダンサーの動きを背景のスクリーンに映写。
ダンサーの動きによって、色と形がさまざまに変化。
アリゾナ州立大学のワークショップで行われたときは、サウンドもダンサーとシンクロしていたとのこと。今回はデモンストレーションであったため、映像のみがシンクロして変化。
赤い服に反応して背景の幾何学的なオブジェクトが変化していきます。
ステージ上は石山雄三氏。ステージ手前でクリスティアン・ツィーグラー氏がMACをオペレーションし、映像空間を生成していきます。背景スクリーンには、球面にマッピングされていくダンサーの身体が映し出されていきます。
舞台芸術の持つ独特の緊張感が、プログラムとダンスによって増幅していきます。

レクチャー全文掲載

2003/4/20 at SPIRAL HALL
クリスティアン・ツィーグラー 
レクチャー&デモンストレーション
「Improvisation Technologies」から「scanned V (5)」まで-
(From 'Improvisation Technologies' to 'scanned V (5)'
- Interactive Dance on Stage)


=1= 
William Forsythe
"Improvisation Technologies"CD-ROM紹介

本日はお招きをいただきまして、本当にありがとうございます。
この1週間は、ダンスアンドメディアの参加者の皆さんと大変楽しいワークショップを行なってきました。そのワークショップの様子も紹介したいと思ってます。ホワイエでは、NESTが作りましたインスタレーション等もご覧いただけることと思います。
さて、今日は「Improvisation TechnologiesからScanned Vまで」という内容です。
この2つは、重要な作品のタイトルです。最初の方はCD−ROMで作りましたウィリアム・フォーサイスのマルチメディア作品です。2つ目のScanned Vというのは、デジタルステージシステムとして開発してきたものの第5段階の作品です。

カールスルーエのメディアアートセンターは、フランクフルトバレエ団とともに、リハーサルをサポートするシステムを作ってきました。そのときフォーサイス自身がメディアアートセンターにリクエストしたポイントがひとつあります。フォーサイスは10年に渡ってフランクフルトバレエ団で仕事をしてきたわけですが、彼の仕事をデジタルアーカイブにしたいということを言ってきました。このデジタルアーカイブを作成するということと同時に、私たちはフォーサイスのために時間を節約するようなCD-ROMを作ろうという目標を設定しました。その結果としてどういったものが出来てきたかというのは、今からご覧いただきます。リハーサル中にダンサーたちが、そのメディアを使って自分たちの動きをより良く勉強することができるようなツールが出来上がりました。
この作業の中で一番最初に出来上がりましたインスタレーション用のもの、これが私がデジタルリハーサルサポート、というシステムですが、大変興味深いものです。
この中で、フォーサイス自身のリハーサルの様子などが、具体的に見ることができます。

今からやることを簡単に、説明しておきましょう。まずはじめにImprovisation Technologiesをご覧いただきます。それから次に日本で制作されたものを紹介いたします。
これは私が最も力を入れたマルチメディアの仕事で、大変私も誇りに思っております。
これは、CD-ROMになっています。そのあとでScanned Vをご覧いただきますが、その時にこのようなデジタルシステムというものが、どのようなものなのか、少し解説を加えたいと思います。Scanned Vのあとに、昨日までの開催していたワークショップの様子もお見せします。休憩を挟んだあとに、特別な実験を行いたいと思います。Nestの石山雄三さんといっしょに新しい技術をここで実際に使ってみたいと思います。この技術は既にアリゾナ州立大学でのワークショップで試してみたものです。アリゾナのほうでは今年の二月にBodysenseという名前で実際に上演しました。そのときは舞台上にデジタルセンサーを導入しました。それでは、具体的にお見せしていきましょう。

この作品は購入することができます。
まず今回は、販売向けCD-ROM版ではなく、バレエ団内部での使用のために作られたインスタレーション版を紹介します。周囲に映っているダンサーは、フランクフルトバレエ団のメンバーです。それぞれのダンサーのところに書かれているのが、各章のボタンです。
ただ非常に内容が多いので、一つの章だけをとりあげることにします。これは基本的には建築における基本原理と同じような形で作り上げられています。フランクフルトバレエ団やフォーサイスといっしょにこのような仕事をしていく中で、私自身はもともと建築の領域での勉強をしていたので、建築とダンスとメディアというものに重なるものがあるということに気づきました。これはリハーサルツールですがこのツールが目的としているのは、ダンサーそれぞれインプロヴィゼーションができるように学んでいくためのツールです。
たとえば二人のダンサーが即興をしようとしているとします。その二人の間には、事前にどういうふうにするか共通の言語での合意がなければなりません。そのコミュニケーションを図るための一つの手段として、建築があります。

この導入部分から始まって、このようなものが盛り込まれています。具体的にどのようなところに展開していくかというと、99年版のCD−ROMを使って説明していきます。このCD-ROM版の映像は、ダンサーに向けられているというよりは、実際に見る人に向けられています。ということは、ダンスを見る人も、「見る目」を鍛えることができるのです。
鑑賞者の目を鍛えるという意味でも、Scanned Vというものを開発していきました。
その仕事の発展していく先にあるのが、インタラクティブステージということになります。
先ほど少しご覧頂いた、「ポイント・ポイント・ライン」という章をこちらのROMで見ていきます。次の章です。

これでどういった形を作り上げていくということがわかり、そうした形から即興につなげ、どのように発展させていくかを学び取ります。この次の章は、情報が重なっていく重層的な構造になっており、またその構造が情報を伝えていきます。たとえばここでは、円を拡大させたり、体を回転させたり、重力との関係というのを扱います。ここで見た動きは、さまざまな層を複合的に利用した動きの結果です。ここで大事なのは、一つの完成された振付が、これを使うことで再構成されているということです。実際にリハーサルの舞台での例を見てみましょう。ここで行われているのは単純な動きで、首の根元のところを回転させながら、重力に任せて自然に落ちるというものです。
次に、Scanned Vにつながっていきます。この仕事をしているときに、私は空間と時間という視点が大変面白いと感じました。まさに、舞台でメディアを使うことでこの再編成が可能になるからです。
これが、私がマルチメディアを使って舞台にかかわっていくことの出発点になりました。この再編成がどういうことかということをCD-ROMで説明していきたいと思います。
ダンサーは、クリスティアナ。このようにいろいろな再構成を行っています。影も見えますね。この影は振付通りに行ったリハーサルのときの映像です。リハーサルのときには振付通りにダンサーは動きますが、実際に踊るときにはダンサーは、その動きを再編成しているのです。クリスティアナは、フランクフルトバレエ団でかつてもっとも優れたダンサーの一人ですが、今は在籍していません。このCD-ROMの最後に、ダンサーのノア?による、空間の描写をお見せしたいと思います。実際にサンプルを見て、建築の考え方を利用してどうやったらその動きを発展させられるかということを見ることができます。
この動きを見ると、めちゃくちゃに動いているように思われるかもしれませんが、極めて正確な動きをしています。ダンサーがどんな動きをするか、1秒単位で正確に説明することができます。このような技術を使ってダンスができることは、だれにとってもすばらしいことだと思います。これをそのまま流して見ます。テーブルです。椅子があります。動きがあって、テーブルです。たたみます。投げました。椅子を…壊します。そして、集めます。これで、Improvisation Technologiesの説明を終わります。

=2=
Mansaku, Mansai
"That's Kyogen!" DVD-ROM紹介

次に狂言に移ります。
最初に見たフォーサイスのほうのCDは、慶応大学出版会で出版しております。こちらの製品は、角川書店で出版されています。私たちはこれを日本語と英語と二つの言語で作りました。紹介の際に、英語のほうをクリックします。そうでないと私がよくわからないものですから…。「Stage」というところでは能舞台についての説明があります。
このCD-ROMの目的は、伝統的な芸能を若者たちにもわかりやすいようにすることでした。その意味では、フォーサイスと同じような目的で作られています。つまり、鑑賞する人の目を鍛えるということです。「Acting」という章を押します。ここでは、舞台に立っている人が何をするかを細かく説明しています。

すいません。画面を見てたら英語になってしまいました(笑)。
これが基本姿勢ですね。とてもコミカルな像を使って、能や狂言者がどのような動きをしているかを示しています。これは日常の姿勢ではなく、エネルギーを全ての方向にむけてバランスよくとるための形です。エネルギーがどのようになっているのかを示したのが、この矢印です。狂言の重要なポイントとして、登場する役者のプロフィールや衣装が大事になってきますが、この章ではそれを紹介しています。きれいな衣装がよくわかるだけでなく、狂言師の姿勢も画像でわかるのです。これでわかるのは、登場人物の位が高くなればなるほど、登場人物の体の幅が広くなることです。ここでは大名という役の特徴が勉強できます。ここをクリックすると、大名が登場してくる作品のサンプルを見ることができます。この発声の部分も極めて特徴的です。先ほどフォーサイスのCDではいろいろな動きを比較してみることができましたが、こちらではどのようにして発声の練習をするのか見ることができます。この作品を作ったものの、私が狂言のエキスパートになったわけではありません。ただ狂言を舞台で披露するには、一生に近い練習をすることが必要だということはわかりました。私は生まれて初めて狂言の舞台をまるまる見たということで、私には大きな体験でした。これを作ることによって、私の鑑賞眼は少し進歩したということです。

=3=
"SCANNED V"デモンストレーション

このCDを作り終わって、次は何をしようかと考えました。99年、2000年に新しいソフトウェアツールがつくり出されました。このソフトを使うと、ラップトップでも、初めてリアルタイムのパフォーマンスが可能になったのです。普通、ダンスというと、その瞬間のみしか存在しませんが、そのツールは、さらに仕事をするために大変役立ちました。そのツールを使って、ライブとメディアインタレーションを交互にして、5段階のスキャンスクリーンを開発しました。Scanned Vは二つの部分から成り立っていて、一つがリアルタイム、一つがサンプリングです。マルチメディアという手法を使ってこのように開発していきましたが、一番最後にリアルタイムでパフォーマンスするというところまできました。のちに、みなさんにご覧頂きます。
この後、Scanned Vのオフラインの時間の部分を20分ごらん頂きます。次にビデオを使いまして、パフォーマンスの最初の部分をごらん頂きます。ダンサーは、Jayachandran Palazhyという人です。彼は、アメリカでのワークショップで知り合った人です。面白かったのは、彼とNestとの間には、既につながりがあったということです。ジェイがイギリスにいたときに、NestのメンバーがCellBytesという場所でのワークショップに参加をしました。ちょうど同じ時期に、私はアメリカにいてプログラムであり音楽家である人と知り合いました。今度は、ドイツ文化センターの招きでダンスアンドメディアのワークショップをここで出来たわけです。日本でも、世界中のダンスとメディアに関わる人たちを集められることがわかりました。私はみなさんにジェイのダンスをお見せするわけで、Nestとも知り合いになることができ、その両者はイギリスでも知り合いだったというわけです。

この仕事にはプログラマーとしてTodd Ingallsという人が参加しています。アメリカ人で、非常に国際的な仕事がなされたというわけです。はじめにステージのほうを紹介したいと思います。これは、平坦なステージにスクリーンがついているという単純な構成です。このカメラを使いまして、ダンサーの動きをライブで録画します。ダンサーは矢印のあるモニターで自分の動きを見ることができます。ということはこのシステムを使って、ダンサーの動きを鑑賞していることになります。このシステムを使ってインタラクティブミュージックが作られ、後ろのスクリーンには同じように動きから影響を受けるビデオ画像が映し出されます。
このようなやり方で目標としたのは、ダンサーを物事の中心に置くことです。ダンサーを取り囲むように、スクリーンに映し出される画像と、ダンサーを取り巻くような音楽を流す配置にしたのです。このようなステージを作り上げるために、古典バレエ的な振付通りのダンサーでは面白みがありません。ここの技術的な可能性に対して、対話しようというような開かれた考えをもったダンサーでなければ、こうした舞台は成り立ちません。ダンスがそれによって豊かになるかどうかは、また別のところでの答えです。ただ私が注意したのは、ビデオの画像とメディアシステムがあまり強調されすぎないようにということです。最後の部分でメディアシステムが強くなりすぎたところがあって、私はダンサーのジェイに、ステージではなく、私の隣に座るように言いました。そこでは具体的に私は、それまで舞台で行われた舞台上のパフォーマンスをディスコで行われるようなDJのシーンに切り替えたのです。舞台の上で、こうしたトランスフォーメーションは私にとって重要なことでした。スクリーンがいろいろな形で使えるということを私はここで強調しています。ここではまったく光を使わずに、後ろのスクリーンは巻き上げてしまったもので、屋根のようにしか見えません。実際にここでダンスが行われているときに、冷たい光が上から投げかけられるという形にしています。これは天井にあたるところを私が舞台の上で綱を使ってスクリーンを巻き上げたという、その綱です。ハイテクを駆使してはいますが、かなりのローテクもその影では使われているということをごらん頂きました。これが舞台における私の仕事です。今日もこれに似た形で、私の作業道具が並んでいます。特にカメラとコンピュータが必要です。
Scanned Vの最初の部分をご覧頂きます。このパフォーマンスでは、ビデオと空間を相互に関連付けることをしました。加えて、身体で作るセンサーを利用しています。これ関しては、これ以上は説明しませんが、休憩のあとのBodySenseの上演でごらんいただけると思います。

=4=
"Body Sense"デモンストレーション

ここでダンサーはGene Cooperという人ですが、アメリカでは自分の断層写真、レントゲン写真を家に持ち帰ることができるそうです。彼は、自身の写真を3Dのプログラムを使って再構成しました。BodySenseがテーマとしているのは、身体と臓器です。
私がこれに対して貢献したのは、丸いものを変化させることと、その変化をダンサーの体に取り付けた心臓のセンサーと関連付けるということです。つまり、体を通して、体によって、変化していくということが、このテーマになりました。技術的な側面から言うと、これがラップトップになってはじめてリアルタイムで3Dの領域で仕事ができるようになった成果です。
私が1993年にカールスルーエのメディアアートセンターで仕事をはじめたときは、このようなリアルタイムで仕事ができるということは、本当に選ばれた小数の人にしか許されない技術でありまして、その当時の私のボスでした、ジェフリー・シュアーという人だけがそれをできたのです。それから10年を経て、今ではだれでもその技術を駆使できるようになったのです。
これが、ソフトウェアのスクリーンでご覧頂きますが、これではわかりにくいかもしれません。右側に映っているのが実際の動きなのですが、この動きを変化させたのが、左側のような画像です。もちろんこれは静止画像なのでわかりにくいですが、動いているのをみれば、もっとわかると思います。

運動ということを言ったので、Scanned Vの最初の所をお見せしたいと思います。この後、ライブのパフォーマンスをごらんいただこうとと思います。Scanned Vの最後のステージでは一番最初のときの動きを再編成するということをしています。この映像では、同時進行でハードディスクにデジタル化していきました。10秒単位でそれを行っていました。
これは30分くらい前にそこで作った映像を再編成して、イメージを作ったものです。音楽は彼の動きによって創り出されたものです。ちょっと音が悪いのは申し訳ないですが、これはビデオでとった音をそのまま使っているからです。
最後の音楽が、池田亮二さんによるものだったということを付け加えておきたいと思います。みなさんはよくご存知だと思います。このすばらしいスパイラルホールと池田亮二さんはゆかりのある方と伺っています。池田さんのご好意に預かって、私は彼の音楽を使って仕事することができました。直接知り合いになる機会にはめぐまれませんでしたが、アートメディアセンターでの池田さんのコンサートを私は聞きに行ったことがあります。彼のオーディオCDを買うことができました。「死んだ牛」と直訳できるタイトルだったと思います。そのCDから2番目の作品を利用させていただきました。これからご覧頂くもののなかでは、音楽のなかにあらかじめ一定のQポイントを組み込んでいます。
システムは自動的に走り始めます。最初にセンサーがピンピンという音が入るところがあります。それは、私が手ではそうした操作がキチンとできないので、そのようなエラーが聞こえます。最初のステレオがインストールされると、そのあと、私が直接マニュアルでいろんな操作を行えます。ちょうどビデオシンセサイザーのようなものです。ではインストールして、実際に動かしてみます。

=5=
"Real Time Presence"ワークショップ報告

それでは、ワークショップの方へ移りたいと思います。このワークショップのために、私は日本にきたわけです。Dance and Media2003に参加できたことを、私は大変うれしく思います。ワークショップ全体、大変うまく進行したと思います。ワークショップの成果を逐一紹介するわけにはいきませんけれども、休憩前に、どんな雰囲気であったかは紹介したいと思います。急遽、いくつかの画像を用意しました。ワークショップをしている間、私がどんなことをやっていたかということを雰囲気的につかんでいただけると思います。ワークショップの一番最後には、この体育館の中でのプレゼンテーションを行いましたが、この機械装置は極めて複雑なものが出来上がっているということはお分かりいただけると思います。ワークショップが始まる前は、まったくのゼロだったのですが、ゼロから始まって最後には大変よい雰囲気が出来上がりました。この会場は、豊島区旧千川小学校で、体育館を利用しています。この辺にいらっしゃる方はみんな参加者です。どういうふうにスクリーンを作っていったかというのがこれでおわかりになると思います。日本のRE[ ]というグループが大変力強い支援をしてくれました。プロジェクターが設置されていたところですが、そのプロジェクターなどを使ってパフォーマンスをしました。実はワークショップは3つのグループに分かれて行ったわけですが、その3つのグループが全てここでパフォーマンスをするということで、準備の時間というのが3つのグループが同時進行だったというのが大変難しいところでした。自分たちのプレゼンテーションを準備するというだけでも難しいのに、他に同時進行で別のグループが二つやっていると、それとうまくやっていくことも大変困難な作業でした。これまでいろんなワークショップを体験してきましたが、今回のように大変スムーズにいったものはなかったと思います。プレゼンテーション開始直前の様子です。この会場を開ける直前にビデオを編集してみたんですけれども、少し短いものをごらん頂こうと思います。こういうふうに出来上がったものを見るのは私も初めてなんです。私たちがワークショップでいかに楽しんだか、これを見てよくわかっていただけると思います。後に休憩のときに、ホワイエのほうでワークショップのときのドキュメンテーションを流しておりますので、今回のワークショップの中でどんな議論があってどういうふうに仕事が進んでいったかということをもう少し詳しく見ていただけると思います。ワークショップに参加されたみなさんも今日はお見えになっていますので、直接ご質問があればお話していただければと思います。

これで休憩になりますが、休憩のあとにはNestの石山雄三さんとのコラボレーションをライブで8分間のパフォーマンスをごらんいただけます。

=6=
"Body Sense(scene 2)"
with Yuzo Isiyama(NEST)デモンストレーション


=7=
質疑応答

司会者:
どなたか質問したいかたはいらっしゃいますか。挙手をしていただけますか。
観客:
今の映像の作り方を少し具体的にご説明していただきたいと…。
多分あのさっきのご説明にあったダンス写真というんですか、そこらへんのことを…。

CZ:
BodySenseは、いろんなやり方を複合的に組み合わせています。
一つには3Dのデータをあらかじめとっておいて、それがまあいわゆるレントゲンの画像のようなものですね、それをひとつにしてあります。
この映像の場合は、基本的には幾何学的な形として球を出発点としています。
球面に対して、ビデオの画像が投影されているというふうに考えてください。
まず、この球面に色がつけられています。同時に、ビデオから得られたデータ、信号によってボール自体がデフォルムされていきます。
イメージとしては、カメラに映っている映像を出発にして体の中で心臓が掃く拍動している、という心拍を表現するというのがイメージとしてあります。
そういった映像がずっと続いていたわけですけども、最後になってきますと、お気づきになったと思いますが、少し遊びの要素が入ってきます。
そういった中では、私たちも少し遊び心を十分に発揮させてということでいろいろな図形を使いました。たとえば線ですとか、点ですとか、あるいは扇状に広がっていく形とかそういうものを利用しています。もちろんテーマがあって、それを追求しようということは考えましたけれどもそれと同時にいろんなことをやって試してみようという気持ちもありました。3Dのライブラリーで、OpenGLというのがあるんですけれども、ご承知の方もいらっしゃると思います。この3DとOpenGLというのは、みなさんが知っておられるコンピュータゲームの全てに使われております。これをメディアアートにも利用するということを、私たちが発見したわけです。それを使って非常に芸術的な作品ができるのではないかというふうに思いました。

司会者:
ほかにどなたかご質問ありますか。
じゃあ、こちら最後のご質問にしたいと思います。

観客:
面白いリアルタイムの映像と、それから前もってとっていた、プリレコードしていた映像を重ねていっしょに混ぜて使うということの面白さを実際味わわせていただいたわけですが、クリスティアンさんの経験の中で、言葉にして面白いなと思うことを言葉にしてくださいますか、簡単に。

CZ:
どこの面白い部分ですか、その…

観客:
リアルタイム映像とプレリコード映像を、いっしょに同時に操作して使うということについて。

CZ:
おそらく今のご質問は、先ほどのScanned Vの映像を見てのご質問だと思うのですが、私がこういうやり方を非常に興味深いと思うのは、時間と空間をまるで画家であるかのようにして、そこでビジュアルなものをつかって芸術を作っていくということにあるというふうに思います。おそらくメディアアートの将来の目標として、パフォーマンスの中に含まれている絵画的な要素をあとになってから詩的な観点からもう一度作り直していくということにあるんではないでしょうか。
メディアアートという形で私が仕事をしていくときに、コリオグラフィー、振付というものが、鑑賞者の頭の中に生まれてくるということ、それを目指しています。Scanned Vの背景にある考え方としては、この一番最初のライブの部分がありまして、その中にまた自分でパフォーマンスをするという部分になっているわけですけれども、ライブで見るときの「見るという経験」が一回あるわけですが、それをそのあとに、私が処理をしてパフォーマンスをするということによって、同じものでありながら、またもう一つ別な形での見るという経験をそこでお伝えすると言うことができると思います。Scanned Vでやったことは、絵画で、絵を描くというのは、二次元で行われることでありますけれども、そのような絵画的な手法を3Dの次元にまで拡大したということであります。
Scanned Vにおきましては、こういう映像、画像というものを一時にぱっと出るのではなくて、それが徐々に生まれていくというそのプロセスを表現するということを意識的に強くしました。私がみなさまにお見せして、おそらくわかっていただけたのではないかと思いますけれども、なんらかのフィルムというか、映画、動画というものを見たというのではなくて、常に私によって新たに創造される新しい画像というものを見ていただけたのではないかと思います。
こういうパフォーマンスについて、あとでこのパフォーマンスをビデオでとったものを見れるかというような質問について、よく質問を受けました。ただそれに対しては絵画を写真にとるということが、既に絵画を何らかの形で歪めることになるのと同じようにライブで行われたパフォーマンスをビデオにとってそれを見るというのは、本来、ここで行われたライブというパフォーマンスというものをやはり歪めるということになると考えています。私自身はこうした活動を通して最終的にはビジュアルな描写というものを芸術との間に橋をかけたい、そのビジュアルな描写と表現芸術というもの、その二つの間に橋をかけたいというのが、私の目標です。
最後の言葉になりますけれども、私がもしこれを実現しないとすれば、なぜ、私がこのダンスというステージにこれだけ関わってきたのか、その意味はなんだったのかと問わなければいけないことになります。

司会者:
これでじゃあ終了とさせていただきます。

CZ:
日本にお招きを頂いてありがとうございました。
日本においては、授業一つの長さが最大45分だというふうに伺っております。今日はそれより時間をだいぶオーバーして話してしまいましたので、おわび申し上げます。
ただ、私どもがしております仕事というのは、非常に広範なものでありますので、そういった一端でも、ぜひみなさんにわかっていただきたいと思いましたので、すこし長くなりました。
どうもありがとうございました。

司会者:
では、以上をもって、本日のプログラムを終了させていただきます。
ありがとうございました。


司会:黒田隆行(http://www.ball-inc.co.jp)
通訳:桑折千恵子
聞き起こし協力:片山詩織