MAX Workshop in UPLINK
 


▼ダウンロード
『The End of Media Art(メディア・アートの終焉)』
パフォーマンス映像

(QT.mov10MB


テクニカル・シート
(1755*1240 JPEG 320KB)

/

UPLINK + Dance and Media Japan
media workshop Vol.5
『MAX/MSP,JITTER 作品制作ワークショップ』
2004/12/8,12/15,12/21,12/22
ワークショップ・リーダー / 松尾邦彦(CMprocess)


『The End of Media Art(メディア・アートの終焉)』

「で、一体、これは何なのか?」

2004/12/8から全4回のスケジュールで開催されたメディア・ワークショップVOL.5。
今回は、2004年最後のワークショップとして、最終日の発表会は充実したものとなりました。
参加人数が少なかったものの、5台のPCをネットワークで連結し、それぞれには映像や音声がインプットされ、どんどん他のPCにデータを送り込み、無限ループを巻き起こすという参加者による合同作品『The End of Media Art(メディア・アートの終焉)』が展示されました。ど真ん中に設置されたマイクスタンドとマイク。ボイス・パフォーマー(声だけによるノイズ・サウンド)が映像やその他の機能をコントロールしていきます。それぞれの参加者が思いのままのビジュアルやサウンドを、何しろドーンと展示しパフォーマンスしました。
「で、これは一体何を表現しているのか???」と参加者も講師も頭を悩ますものの、なぜか見ていて飽きない。「なぜ見ていて飽きないのか???」と、これも皆で「?」。


松尾邦彦氏

「なぜか見ていて飽きない」

議論の尽きないこの『The End of Media Art』。殺伐としていつつも、余計なモノがごちゃごちゃと組み合わさっていて、どのパーツも常に動作しています。パーツは全てネットワークで連結されていることから、どれかひとつのパーツが止まれば全てが止まる。深読みするとすれば「政治というのはこういういものなんじゃないか?」、「身体というのはこういうものなんじゃないか?」。これはひとつの有機体なのです。
コミュニケーションという言葉が流行している近年、テレビCMなどを見ていると「どんどん繋がる」ことで、より充実した関係が生まれる、という印象を強く受けます。その一方で、繋がることで生まれる拮抗した相互関係、そこから多くのプレッシャーやストレスを巻き起こします。何かが何かを機能させ、自分もいつの間にか何かの機能の一部に取り込まれている。何が一番の始まりなのか、が全くわからないまま全てが連結され、自分も機能に取り込まれていく様子が、おそらく「見ていて飽きない」原因なのではないかと思います。もっともリアリティーがあるのは、その連結が決して「増幅しない」ことです。お互いが淡々とインプットとアウトプットを繰り返し、役割をこなしていいますが、決して自己増幅はしません。どこかのパーツがクラッシュにない限り、単に無期限でループを繰り返します。「殺伐」としたビジュアルに反して、この作品は「ナマナマしく淡々と」しています。
水族館の魚の遊泳のように、グルグル回っているだけ。でも見てて飽きない。



「不在の身体」が引き出された演出

2台のプロジェクターの真ん中には、TVモニターがあります。その前にはマイクスタンドとマイク。ステージにぽつんとマイクスタンドがあると、そこになぜか「ボーカリストの不在」を感じさせます。マイクスタンドがなければ、観る側は、別にボーカリストの存在すら感じず、壁側に展示された3つの映像作品を観るだけの作品だったのかもしれません。もしそこに無理矢理物語を見出すのであれば、「バンドの終焉」ということも言えます。ワークショップでは色々実験してみればいいわけですね、「マイクスタンド置いたら、何か始まりそうな感じしない?」「あ、するかもねー」という具合で。それでいいんです。その結果、「不在の身体」が空間に緊張感とナマナマしさを作り出したのですから。





「ワークショップにおける作品制作の可能性」

DMJのワークショップは、なにしろ作品を作ります。ワークショップ・リーダーのメソッドを参考にしながら、自分の作品を好きなように作り、人に見せます。そして、議論します。その作品が「不出来」で「未熟」であればあるほど、試作・習作としての作品は多くの可能性が見えてきます。まずは作って、人に見せること。この作業をなにしろ多く体験して、最終的な芸術作品を創造できればいいわけです。
コンピューターのソフトの使い方だけを学ぶのではなく、その先にある可能性を知ることが目的です。 今回はその可能性に関しての議論を参加者とできたこと。最高のワークショップです。

2004/11/28