Interview
James Tyson



[LINK]

chapter
http://www.chapter.org
James Tyson Interview
about CHAPTER
聞き手/飯名尚人 [Dance and Media Japan]
15 MAR 2007
翻訳/田村倫子


イギリス・ウェールズにあるChapter。劇場、ギャラリー、映画館、ショップ、カフェのある複合施設です。過去に日本からは劇団解体社、指輪ホテルがパフォーマンスを行っています。Chapterのシアター担当キュレーター、ジェームス・タイソン氏が来日。わざわざDance and Media Japanの事務所まで来て頂きました。せっかくなのでインタビューさせて欲しい、という急なお願いにも快く対応してもらえました。とてもマイルドな人でした。また、Chapterに実際に研修に行かれた秦岳志さんに同席いただきました。また、写真の提供、テキストの校正など、秦さんのご協力を頂きました。どうもありがとうございます。 (飯名尚人)

 
―― まず、Chapter について教えてください。

Chapter Art Centerは1971年に設立されました。主にアーティストが公共の場で集まって創造、革新をし、新しいことを試して国際的内容の作品を作る場所を提供する、というのが目的です。異なる分野の芸術形態が1つのビルの中に入っていて、当初から劇場が二つ、映画館が二つとビジュアルアートギャラリー、カフェがありました。今ではアーティスト個人と文化事業団体の為に50のスタジオを設置しています。

―― スタジオを使う場合はレジデンス?それとも賃貸ですか?

ほとんど賃貸です。日本と同じ、一つのビルの中に色んな独立企業が入っているようなイメージです。比較的安く貸しています。賃貸料はその団体の規模によって違っていて、例えばアーティスト個人には映像製作カンパニーより安く、というように、各アーティストをサポートできるようにしています。
クリスマスを除いて、毎日朝8:30から夜23:00まで開放しています。日中はアーティストやカンパニーが活動し、夜はアートエキシビジョンやシネマ、舞台等を公開しています。またコミュニティーセンターとしてスペースも提供していて、ダンスやヨガクラスに使われたり、会議室として使われてもいます。

年間を通じてプログラムもありますね。地元のアート、アーティストを支援し、基準を上げるようなプログラムです。海外アーティストを招いて、他の地域で何が行われているかの情報交換をしたり。カーディフは人口40万人の都市で、ウェールズの首都なので、国際的関係の中でヨーロッパのコンテクスト、特にイギリスのコンテクストとのリンクも提供しています。


―― Chapterにはいつ参加したのですか?

私はシアタープログラマーからのスタートでした。Chapterには主要なヴィジュアルアート/シアター/シネマの3部門があって、今私はシアター部門のヘッドですが、1996年にChapterに参加して、1999年にプログラマーになりました。
このアートセンターが設立された当時、理念の一つとして大事だったのは、アーティストにやさしい場所、アーティストが自分の作品作りができる場所を作る事でした。今では異なるアートフォームが出会う場所。60〜70年代、主にバーがその役割を果たしていたような、映像作家や劇場関係者や色んな人々が集まる場所。今ではその考えは社会全体に広がっているとは思います。同時に、経済的観点からもセンターの存続性という点は設立当初から非常に重要でした。バーのように利益を得る場所は有効な側面でした。カフェやバーというアイデアは経済面だけではなくセンターの社会的意義という面でも不可欠です。


―― スタジオの賃貸やカフェの収益が、全体の事業収益の7割以上という話を聞きました。カフェの利用率は高いのですか?カフェはどういう位置づけなのでしょう?



この地域の中にあって、Chapterのカフェやバーの質は高い方だと思います。また、何も注文せずただ空いている席に座って読書したり新聞を読んだり、ただでテーブルを使うことができる。カフェだけれども、ちょっと何かを買うカウンターがある会議室、という使い方もできる。そして紅茶や珈琲も安いし。

この10数年で周辺地域はかなり変わったと思います、時代の変化もあって。特にChapter周辺は労働階層地域になり、人々の考え方も国際的に、世界中のアーティストが集まる場所になりました。以前はそんな場所はなかった、世界的歴史がある、例えばロンドンのような大都市でなければ。でもカーディフは港町で有名で、アフリカ、インド、イギリスの混在社会のような、そんな感覚はあったんです。どこか別の世界の一部と繋がっている歴史があった。でもアートセンターの設立は、アーティストが集まる場所がアートを育てる、という構造に私達が参加できる、インターフェースを施す場所を提供している。コストをかけずに上手く集会が機能し、レベルの高い経験ができる、そんな場所を作る方法を整理し、それを果たす事です。バーはどんな場所にもあるし、実際に国際的です。そしてそれはセンターにも大事だと思う、ある意味不可欠。飲まないと元気が出ないしね(笑)。

―― どんなアーティストを呼んでいるのですか? 作品を選ぶときのポイントはなんですか?


カーディフは特に、実験的で、型にはまらない舞台芸術を発展させたという強い歴史があります。ダンスとヴィジュアルアーティスト、ダンスとミュージシャン、ダンスと映画。どんな舞台芸術を招聘するかを考える時、私はそれが今カーディフにあるコンテクストと結び付くことが出来るか、いかに新しいカンパニーや海外カンパニーがカーディフで製作されているものに情報を与え、発展させ、形成する手伝いができるかを見ます。何故なら、それらが始めの革新だからです。特殊な場所で、何がどれだけ適切であるかを誰かが言うのと同じ影響を与える、個性的で特殊でユニークな構想を作る環境を与える、私の興味はそこです。演目がダンスパフォーマンス、フィルム、ビデオ、演劇や何であるか、それは私にとっては二次的なもの、ジャンルは特に問題ではありません。もしそのパフォーマンスがチャプターの劇場空間では上演不可能であれば、他の会場を探して上演を実現させます。それは本当にアーティストのアイデアに合うインフラとコンテクストを見つける事です。ローカルシーンを発展させる、広義な意味で対話の一部とする為の、芸術活動の特殊性ですね。

 


―― 年にどのくらいアーティストを呼んでいるのですか?

一概に言えませんが、毎週違うパフォーマーを呼んで3〜4夜、上演しています。毎年70カンパニーくらい発表します。大半は地元やイギリスのアーティストですが、海外からも招いています。音楽家や映画製作グループ、ダンスカンパニー等。

―― あなたのバックグラウンドを教えてください。アートマネージメントや演劇専攻ですか?

私は大学で英文学を学びました。それから舞台演出を学びました。でもChapterが実際に色んな面で私を育ててくれましたね。多くの仕事の中でも国際情勢に興味があります。異文化間で、経済的に、どう影響を受け、同時にどう見込みを立てて結果をもたらすかという観点で。おそらくその関係が、人を動機付ける興味深い点だと思います。それによって状況がどう変化するか、広範囲な状況あるいは個々の状況で。

世界中どこでも同じ疑問があるのですが、「パフォーミングアートに何ができるか」という疑問です。まずはあなたがいる場所でその方法を見つける事ですね。誰にとってもより良い安定した人生を送るのは良い事だし、その意味で多かれ少なかれ手助けにはなっているかも知れない。でも時々それは重要なポイントではない事もある。それを判断するのが未解決の仕事に強い影響を与える一番重要な要因。日本はイギリスやヨーロッパと状況が違う所はたくさんあるだろうし、それが良いか悪いかは分からない。どう個人がこれらの事を注意深く考えるべきかを言うのは難しい、今いる状況を改善しようとすればするほど。もちろん、持っているコネクションを上手く使う事には効果があると思います。
それにしても日本では多くの人が、一方で収入を得るための仕事をしながら、アーティストとしての活動を行っている事にとても感銘を受けています。それだけモチベーションがあって、だからこそ疑問が生まれるのでしょうし。私はそれをとても尊敬しているんです。


―― どんな事業を行っているのか簡単に教えてください。

年間を通じてプログラムがあり、よく特別シーズン(テーマを決めた小特集みたいなものです。海外からのカンパニーを2〜3まとめて特集を組むような感じ)を作ります。特別な製作をChapterが直接手助けする(Chapterが舞台作品の共同製作をする、という事です。 例えば、アーティストを一定期間(数週間程度)滞在させて、その間に作品を一緒に作っていく。レジデンシーみたいな形)。それとは別に、ただ作品を持ってきてプレゼンするだけの人もいる。通常はそれほど劇場を貸し出してはなく、カンパニーを招待しています。
来年はこの1年間準備してきた3つのカンパニーのコラボレーションプロジェクトをどこかで一晩上演します。それぞれのカンパニーに監督や作家がいて、ワークショップを開く等して1年を通して関係を築いてきました。
それから、今私達はコレオグラフィ・プロジェクトとしてNYで15年活動していたイギリス人ダンサー兼振付師のSarah Michelsonと仕事をしています。来年1年を通して新しい作品を作り、1月と6月に公演予定です。
他にも7月にはCardiff City of Drama Festival があり、そこで2年間準備してきたドラマを上演します。他にも地元カンパニーや海外カンパニーの作品4つ、5つ程をそれぞれ3週間くらい上演します。
10月には第7回目になるExperimentica(パフォーマンスアートのフェスティバル)を控えています。ほとんどが個人アーティストやグループによる参加で、他にもパフォーマンスアートやインスタレーション、フィルム、ビデオアート等、フェスティバルらしく異分野のアートが短期間に集結するプロジェクトになっています。


―― どうもありがとうございました。