ワークショップ
 

Dance and Media Workshop 山形 REPORT
2007年より活動を開始したDance and Media Japan (以下DMJ)/ Yamagata officeの酒井聡です。今後ともよろしくお願いします。
記事/酒井聡(Dance and Media Japan) / 15 AUG 2006
「<大人向け>と<子供向け>」
去る1月31日にYamagata officeの仕事始めとして、 DMJの主宰者・飯名尚人を山形に迎え、ダンススペース・ユミ・ダンスカンパニーの主催のもと「Dance and Media Workshop 山形」を行いました。

今回のワークショップでは、ダンススペース・ユミ・ダンスカンパニーの主宰者の加藤由美さんのご好意によって、加藤さんが普段ダンスを教えている生徒の皆さんの発表会と同時開催。山形市民会館というDMJワークショップの中でも例をみない非常に大きな会場でワークショップと成果発表を行うことが出来ました。
ワークショップは <大人向け>と<子供向け>と対象年齢を分け、二つのワークショップを開催し、<大人向け>では、発表会前日1日を使い実際にダンスとメディアの作品作りをし、その成果を発表会にてショーイングを行いました。<子供向け>では、リアルタイム映
像を使ったゲーム感覚の体験ワークショップを行いました。<大人向け>、<子供向け>ともに発表会当日に来場者の皆さんにも見てもらうこととしたため、<大人向け>では良い緊張感が生まれ、<子供向け>では本番前の子供達の緊張をほぐすことになったのではないでしょうか。



「振り付けではないルール/大人向けワークショップ」

さて、ワークショップの実際の内容です、<大人向け>ではこれまでのDMJワークショップでも、何度か講師をされている松尾邦彦氏の「CMprocess」をもとに全体の流れ、ルール作りを行い、小型のビデオカメラをダンサー自身が使用し自らを映してみた り、その映像にエフェクトをかけてみたりといったことを行いました。



これだけを聞くと普段のDMJワークショップと何ら変わりがないように思えますが、今回のワークショップ参加者は、普段は厳密な振り付けのもとダンスしている方々ばかり。即興で踊るということになれていない方が大多数。まずはただ自分で決めたルートにそって歩くところから始め、徐々にルール、例えば誰かと目が合ったらその人の名を体の一部を使って書くなどを増やしていき、ルートを自分の振りを踊りながら通過するなど即興性を増していくこととなりました。
通常のDMJワークショップでは、自分のダンスの癖などから自分を解放するために、振りではないルールを設け、それに没頭させること、そのルールによる即興性によって予定調和ではない動きやダンスを創造するわけですが、今回のワークショップ参加者にとってはこちらから提示したルールが振りとなってしまっている節が見え隠れし、通常のワークショップとは違った全体の流れが生まれ出しました。通常のワークショップではどれだけルールを増やしても、全体の流れはダンスの流れからなかなか抜け出さないのですが、今回は「ダンスを観るより、渋谷のスクランブル交差点を見ているほうが面白い」という松尾氏の「CMprocess」の発端ともいえる動きに近いと感じました。
もちろん参加者は普段ダンスをされている方達なので、個々の動きは滑らかなだけにただのスクランブル交差点ではないスピード感のある交差点へとなっていました。

徐々にルールにそった動きにもなれたころ、今度は新しい展開として小型のビデオカメラを参加者の方一人一人に預け思い思い踊って頂くことに。カメラから入力された映像は一度映像処理用のPowerBookを通り、ディレイのかかった映像となって投影されます。つまりは少し前の自分と現在の自分が幾重にも重なったものが投影されることになります。この場合観客に見せるのは本人の体ではなく、ビデオが映し出す映像であり、それを活かす動きをすることが重要なのですが、そうなるとどうしても映し出した映像に気を使ってしまい思うように動けなくなってしまう。そこでカメラを手持ちではなく定点に置き、そこに向かって何らかの動きをしてもらうことに。このことによってカメラ自体が動く
ことがなくなったので、映像と自分の動きの両者を認識し易くなり参加者の方達も思い思いその効果を自身で体験し楽しんでもらうことが出来ました。

「CMprocess」の方法論とテクノロジーとの体験時間に大幅に時間を使ってしまいました。明日には観客の前で成果発表を行わなければなりません。

時間を見てみるとワークショップ終了予定時間の約1時間前。作品としてまとめる作業をしなくてはいけません。よって、ここからは全体へのルールによって作品としての構成を作っていくこととなりました。全体のルールとして主に用いるのは「音」。踊る基本のリズムとなる「音」以外に、ルールとしての「音」が挿入されました。具体的には、タイムカウントによってダンサーにタイムラインを与え、時折ランダムに挿入されるクリック音によって動きのスピードを操作し、ホワイトノイズによって全体ダンサー全員に影響を与えるルールを加えることで、全体の構成を形作ることに。ワークショップ終了間際に一度通しを行ったところ、 簡単なリハーサルをした後は明日の本番あるのみというタイトなスケ
ジュールにふさわしい不思議とスピード感のある作品になっていたのでした。



「おもちゃとしてのテクノロジー/子供向けワークショップ」

DMJ初の試みとして、子供向けワークショップを行いました。加藤さんのダンススタジオには多くの子供達が参加しており、その子供達にも是非何かして欲しいという要望を頂いたためです。普段、子供(幼稚園から小学生まで)と接する機会の少ない僕と飯名さんはワークショップ開始直前までその内容について悩み続けました。子供達がどのような反応をするか全く想像がつかなかったため、当初2種類のネタを用意しました。1つはマウスを用いたテルミン。子供達に自由にマウスを動かしてもらうことで様々な音が生成されます。もう1つは<大人向け>でも使用したディレイを用いた映像効果。<大人向け>と違うのは何秒か前の自分と現在の自分が一つ一つ映し出されること。この効果を用いると「独りザ・たっち」が可能になるのです。つまり映像の中で自分が二人登場する、という単純な仕組み。



このデモンストレーションを僕の大学の後輩である町くんにお願いし、彼の素晴らしい「ザ・たっち」のネタ「ちょっと。ちょっとちょっと。」を子供達に見せると会場いっぱいに響き渡る歓声!ワークショップを始めてみれば子供達の圧倒的なパワーに押され、「独りザ・たっち」を体験してもらうだけで、あっという間に1時間過ぎてしまったのでした。子供達の純粋な反応は自分がテクノロジーという言葉に身構え縛られているようにさえ感じ、「モノ」「コト」を感じるということへの再認識へと繋がりました。そして子供達の屈託のない笑顔は、僕や飯名さん、町くんだけでなく発表会関係者の緊張を和らげ、観客のみなさんにも発表会の公演名である「感謝する心」として届いたのではないでしょうか。



「ダンスとは、テクノロジーとは」

「Dance and Media Workshop 山形」に合わせて飯名さんに僕が在籍している東北芸術工科大学にて「パフォーミング・アートにおけるダンスとテクノロジー」と題してレクチャーを行って頂きました。
そもそも何故このようなレクチャーを企画したかというと、東北芸術工科大学では年何回かパフォーミング・アートのイベントがあるにも関わらずあまり学生達の注目、興味をひいていないように感じたからです。
また、その原因はパフォーミング・アートとはどういったものなのかを知らないからではないかと考えたのです。本学にも舞踏を教えている教員の方はいらっしゃいますが、今回のレクチャーは踊り手からの視点ではなく、キュレーター・プロデューサーといった作品を冷静な視点から見ている方に日本国内外の現状の話を伺いたいと考えました。そこで
DMJ飯名さんに、日本国内外のパフォーミング・アートの現状、テクノロジー・アートの現状を2006年の作品を振り返りながら、また具体的なイメージ(Dance and Media Japanが所有するパフォーミング・アートの映像アーカイブ、ビデオダンスなど)を交えながら約2時間のレクチャーを行いました。

大学が休業期間ということもあり受講生は少数ではありましたが、DMJが行ってきたワークショップの内容やテクノロジー・アートに多く用いられるMax/MSPといったソフトウェアの話にまで話題は膨らみ非常に濃い時間となったのではないでしょうか?
僕のダメ司会っぷりも発揮してしまったので、今後はこのようなレクチャーをYamagata officeでも定期的に開催していけると良いのではないかと思っています。


「地方ワークショップの意義」

山形という地方でこの様なワークショップを行うことはこれまでに例をみません。今までは特別な施設がない限り、ダンスとメディアの両方を用いたワークショップは開催が困難でした。しかしながら、パソコンと機材の飛躍的な性能アップと小型化に伴い、必要な機材を簡単にしかも少人数で持ち運ぶことが可能となり、踊れる場所さえ確保出来れば、ダンスとメディアのワークショップが出来る状態になったと今回の山形ワークショップが示しているのではないでしょうか?

今回、使用した機材はほぼ飯名さんが手荷物として新幹線で運んで来たもののみというコンパクトなもの。プロジェクターのみ現地調達しましたが、ワークショップとは別機材の記録撮影用カメラを持って来たことから全ての機材を手荷物で持ち運び可能といっても過言ではありません。
さらにはスタッフも最低限の人数。ワークショップを進行するスタッフ(飯名氏)、機材をオペレーションするスタッフ(酒井)、これにアシスタントとして町くんの計3名。ワークショップ参加者が<大人向け>に約10人、<子供向け>に約40人だったということを考えるとスタッフも非常に少なくすみました。
このようにワークショップを開催する側がこれだけ身軽な状態であれば、特別な施設でのみされてきたダンスとメディアのワークショップをどこでも開催することが出来ます。裏を返せばこの様なワークショップに参加したいが、開催地が遠く参加を諦めていた人たちは自分達の活動エリアに講師を招きワークショップを開催してもらうことも可能なので
す。この様なことから今回の山形ワークショップはダンスやメディアのワークショップのあり方を変える第一歩として非常に価値の高いものになったと考えています。


DMJ / Yamagata officeの仕事始めである「Dance and Media Workshop 山形」並びに「レクチャー Dance and Media Japan / 2007 ダンスとテクノロジー」無事に終了することが出来ましたのも、 ダンススペース・ユミ・ダンスカンパニーの主宰者の加藤由美氏、 また関係者各位のご助力、町くんの素晴らしいデモンストレーションによるものだと思います。この場を借りて感謝致します。