The sail is going with thousand winds
25'58"
Artist: Sena Kumatori
Curator: Karin Idouji
出演
杉波風香/セイル.....宮島遥夏
木島優香/セイル.....岩田日菜子
10年前のセイル.....千葉竜生
相澤友二.....黒澤虹郎
清水幸子.....伊堂寺夏鈴
内田恵.....百目鬼もも子
藤井実希.....清山愛麗
音声
岩田日菜子 大久保美希 千葉竜生
村上竜太 熊捕由希
撮影
熊捕聖奈 宮島遥夏
美術
熊捕聖奈
メイク
岩田日菜子 小野澤志穂 宮島遥夏
監督/脚本/編集
熊捕聖奈
作品解説
魂の解放と身体性
現代社会において学生の自殺は後を止まない。その原因はなんだろう。クラスメイトからのいじめ、親からの虐待など直接的な攻撃によるものだけだろうか。学校という集団は同調を求める。その中で価値観の違いや小さい身体的な特徴の違い、または友人の何気ない一言で私たちは悩んでしまう。その悩みを誰にも相談出来ず肥大化し、最優的に自殺という悲しい結末を歩んでしまう学生も多いのではないか。
この作品の主人公である杉波風香は人一倍努力を惜しまない、真面目な生徒である。また、彼女の優秀さをクラスメートは頼りにしている。側から見たら、彼女を羨む者も多いだろう。しかし、彼女自身はこの集団に寄生され利用されていると感じてしまう。また、彼女にはこの悩みを相談できる相手がいなかった。悩みは人知れず肥大化し彼女を蝕み、抗う心さえも失ってしまう。生きながら死んでいると言ってもいい生活に終止符を打つセイルが現れた時、彼女は微笑む。そこにあったのは死ではなく、この世界から解放なのだ。
この作品は熊捕監督が高校時代に制作した作品である。彼女の体験からなるこの作品は死への考えを私たちに問いかける。殺される前の風香の表情からは、死は不幸ではなく、彼女を蝕むしがらみからの解放を「幸せ」と感じ取れる。その魂の解放に身体性を感じ、この作品を選んだ。この作品を通して、改めて生きるということを考えさせられるのではないか。
Freeing of Soul and Physicality
There is no end to student suicides in modern society. What are the causes? Is it just direct aggression, such as bullying by classmates or abuse by parents? School is a community that demands to conform. Students may be troubled by small differences in values, physical characteristics, or casual remarks from a friend. Unable to talk to anyone about it, their worries grow, ending up in a sad suicide.
The protagonist of this film, Suginami Fuka, is an earnest student who does spare no effort. She has a good relationship with her classmates, her friends rely on her kind nature. However, she feels being used, and the group parasites her. She has no one to talk to. Anxieties grow quietly inside her, consuming her and robbing her of the ability to resist. She grins when SAYLE shows up to put an end to her gray life. Death is not death for her, but liberation from this world.
This film was directed by Kumakasa during her high school years. Based on her own experiences, she questions us about death. From the expression on Fuka's face, before she was killed, we could see that death was not an unwanted experience. Instead, she felt "happy" to be free from the relationships that bind her. I selected this work because I thought physicality was in the theme of soul liberation. Through this work, we can rethink the meaning of life.
作者から・・・
お風呂に入るのが好きな猫と、お風呂に入るのが嫌いな猫。その2匹は、同じ状況でも、幸せに感じられるかは別です。それは仕方ないしどうしようもない事。
だって、経験も、思想も、感覚も違うのですから。
そういう意味では、その2匹の猫は、別の生き物同士である、と言えます。
ではその別の生き物になる事が出来る、シェイプシフターを知っていますか?
実体はなく、自身の姿を別の生き物に変えられる、空想上の生き物です。
本作品は、幸せそうな少女と、その少女になりたいシェイプシフターの二人がメインとなっています。
少女のモデルは私です。
共感する事はできないかもしれません。
でもそれは、モデルである私とあなたが、別の生き物であるから。皆さんには、少女にとっての幸せと、シェイ プシフターにとっての幸せとは何だったのかを考えてみて欲しいです。
そしてそれについてどう思ったのかを感じて下さい。
作中に登場する主人公の部屋は、学校にある何も無い和室に、ベッドや机を1から運んで部屋作りをしたり、主人公が描いている絵を、夜中まで描き続けて完成させたりしました。クラスメイトを連れて、ミニバスを借りて千葉の海までロケ撮影にも行きました。
作家プロフィール
熊捕聖奈
2000年6月23日生まれ 埼玉県出身
埼玉県立芸術総合 高等学校卒業
東京造形大学映画・映像専攻領域在学
2017
「1年後」 eiga worldcup 2017 自由部門 佳作
2018
「灯火」 DigiCon6 JAPAN Youth部門 Youth 監督賞
「帆は千の風任せ」 Goodstock FilmSession Vol.2 上映&トークショー
「灯火」 eiga worldcup 2018 自由部門 佳作
「帆は千の風任せ」 eiga worldcup 2018 自由部門入賞 最優秀美術賞 最優秀女子助演賞(セイル役 岩田 日菜子)
2019
「弟とキャッチボール」 東京ビデオフェスティバル TVF2019アワード
「灯火」 第15回JCF学生映画祭 一次審査突破
「Humanity」 第20回ハンブルグ日本映画祭 ドイツで招待上映
「帆は千の風任せ」 上映会&トークショー 2019.03.31
キュレーター プロフィール
伊堂寺夏鈴
2000年8月1日生まれ 埼玉県出身
埼玉県立芸術総合高等学校卒業
東京造形大学映画・映像専攻領域在学
2018
「ごめん」DigiCon6 JAPAN YouthSilver 受賞
熊捕聖奈(監督) × 伊堂寺夏鈴(キュレーター)対談
作家の熊捕聖奈とキュレーター伊堂寺夏鈴は高校、大学と同じ専攻で共に制作を行ってきた。これまで5年にわたり彼女の作品を観てきた私(伊堂寺)にとって、この作品はこれまでの彼女の作品とは大きく異なり衝撃的だった。彼女の中で一体どの様な感情の変化があったのか。それについて対談した記録である。
伊堂寺「今までの作品制作に対する気持ちの変化を聞いてきたいなと思います」
熊捕「はい!そうだな~。自分はどう変わったのかなって考えたとき、結果的にいうといい意味みで、ずっと変わってないものの方が多いのかなって思った」
伊「へぇー」
熊「なんか、聖奈にとって映画は親友みたいな感じなんだよね」
伊「親友?!」
熊「うん。聖奈は人と仲良くなるのが下手くそだし、よく怒らせちゃうこともいっぱいあるし、鈍臭いし、人をイラつかせてしまうことも多いんだけど、でも・・・何だろ。自分の気持ちを上手く伝えられるんだよね、映像は」
伊「うん」
熊「自分を自分で表現できないのだったら、作品が表現してくれればいいなって。作品が聖奈のことを一番理解してくれてる、言いたいことを代弁してくれる親友みたいな存在なんだよね」
伊「じゃあ、この作品は当時の聖奈の気持ちなんだね」
熊「そうだね」
制作経緯について
伊「この作品は当時のクラスの雰囲気みたいなものがしっかり写っているじゃん?」
熊「うん」
伊「この作品を観た時、私は聖奈に申し訳なくなちゃって・・・」
熊「ふふふ」
伊「当時のあのクラスの空気感は聖奈を追い詰めていたのかって」
熊「えっとね、ちょうど制作する前にね。うつ病みたいな暗い気持ちになった期間があって。それまではみんなと仲良くなりたいなってフワフワした気持ちでいたけど、体育祭とかイベントをこなしていく中で、この人たちはみんなでみんなを思いやる気持ちが無いのかなって疑いの気持ちが生まれちゃって。そういう変化の時期だったんだよね」
伊「うん」
熊「これまでは100人に観せて80人は内容を分かってもらえるし、面白いねって思ってもらえる映画が好きだったけど、100人に観せて5人にしか分かってもらえないけど、凄いこの作品を好きだって言ってもらえるモノにしたいと思って。それを造るには聖奈しか共感できない気持ちとかを出す必要があったんだよね」
伊「うん」
熊「聖奈があんな身近な話だしたら気まずくなっちゃうかなって心配もしたんだけど、別に特定の人物もいないし、その人たちを責めているつもりもなくて。ただ、立場が違えば傷ついちゃうこともあるんだよってことを教えたかったかな」
伊「そっか・・・」
熊「実際、卒業制作展でコメントシートもらった時に、『今の自分にすごく刺さりました。この映画を作ってくれてありがとう』ってコメントが一枚だけあって。そのコメントがすごく嬉しくて。この一言が欲しかったためにこの作品を造ったんだなって再確認したんだ。ネガティヴから生まれた作品だけど、表現することによってポジティブになれたし、自分のためになった作品です!」
伊「ありがとう、このことを今日聞けてなかったら聖奈に対して申し訳ない気持ちをずっと引きずってたかもしれない。この対談やってよかった」
熊「そうだね」