fr(l)esh
03'37"
Artist: Miki Yamazaki
Director: Miki Yamazaki
Performers: Hinata Akagi Sawa Kuwabara Hiyori Yamamoto Motoe Kurihara Hikari Nakayama
作品解説
「人」
・私は、人である。
・スーパーに、トレーに乗ってラップに包まれた肉。それは新鮮で、綺麗なものに見えます。人はどの条件で新鮮や、綺麗になるんだろう。
・人は生きてく中で何かになって生きてる。例えば、学生、社会人、お医者さん、警察官。その、何ににもなってない人が、人をあらわしている。
・人って、笑ったり、泣いたりして感情を表したりするけど、人の鳴き声ってなんだろう。それは人混みの中でたくさんの人が同時に喋っているときに聞こえてくるような音が、人の鳴き声に聞こえる。
・もし人の鳴き声を表すなら、何の意味持たない、ぽっと出やすい「あ」の音が一番それに近い。「あ」が重なっていく音。
・人は何かになって生活しているけど、何かになってない人は何ももってないというわけでなく、個性とかその人の感情とか、それは人であって、剥がせない部分である。
・アクセサリー、化粧、ネイル、ポーズなどは個性として判断した。
・わたしは初対面の人に、学生さん?と聞かれる。だから、多分わたしは学生さんになって普段生活している。
・人の鮮度を意識して、綺麗に撮ることを心がけたが、人って綺麗なもので、綺麗に撮ることで人を表現できているのかはわからない。
・わたしの中で、鮮度を表すものとして、ラップと考えている
・わたしは人が好き。面白い生き物だから。
・人だけに限られたことではないけれど、人は、人ごとに違ってて、おんなじ人はいない。十人十色。だから表し切ることはない。
・撮影現場は無音の空間で、ラップに巻かれた状態で、10分間過ごしてもらった。
・ラップの巻き方や、ポーズはこちらから指定した。鮮度を画面に表現するため。
・何を考えてとか、特になく、感情出来なことの要求はない。人は考えることをやめられないと思うから。
People.
- I am a person.
- Meat on a tray, wrapped in plastic, in a supermarket. It looks fresh and clean. Under what conditions does a person become fresh and clean?
- People live by becoming something in their lives. For example, a student, a worker, a doctor, a policeman. Those people who are not a part of anything represent the people.
- People express their emotions by laughing and crying, but how does a person chirp? It is a sound that can be heard when many people are talking at the same time in a crowded place.
- If I were to describe a person chirp, the closest thing to it would be a meaningless "Ah" sound that comes out easily. The sound of "Ah" overlapping each other.
- People live their lives by becoming something, but it's not like those who haven't become anything don't have anything, but their personality and emotions are the people itself and cannot be removed.
- I judge accessories, make-up, nail polish and poses as personality.
- When I meet someone for the first time, they will ask me if I am a student. So maybe that's why I'm become a student and live my life.
- I tried to take a clean picture of people with freshness in mind, but people are beautiful anyways, and I don't know even if taking beautiful pictures are ways to represent the people.
- I feel rap is a way to know the freshness.
- I like the people. I like people because they are interesting creatures.
- It is not limited to people, but each person is different and no one is the same. So it's impossible to describe everything.
- I had them spend 10 minutes on the set in a silent space, wrapped in plastic wrap.
- Suggestions in the way the wrap was wrapped and the poses were given out. This was done for the sake of freshness.
- I won't ask someone to think in a curtain way or to be emotional. People cannot stop thinking.
作家プロフィール
山崎未樹
映像・写真・インスタレーション
東京造形大学映画・映像専攻在学
2020年マガジン「bubu」を桑原咲羽(「身体を巡る映画祭」にてキュレーターを務めている)とともに活動開始。”なくてもいいけどあったら生活が豊かになる”をモットーに、zineなどを届ける活動をしている。
作品
「努努」(映像作品 2018) / 「冥々」(映像作品 2018) / 「fr(l)esh」 (zine 2020) / 「shot 1」 (zine 2020)
批評
まるやまさとわ
写真・ミクストメディア・インスタレーション
東京造形大学造形学部彫刻専攻領域3年
人間とは何か、透明のビニールによって包まれた人間を映像として記録することで作者は鑑賞者に問いかけを行っている。鑑賞者の立ち位置によって表情を変える多層的な意味を凝縮させた身体に透明のビニールを巻きつけるという演出は、空間的な展開による豊かな知覚的効果をもたらしているといえるのではないだろうか。
作者はスーパーの精肉コーナーに並ぶラップに包まれた肉を見たときの記憶を作品に内在させている。
透明のビニールとは外気に肉が触れてしまうのを防ぐものであり、鮮度を保つためのものである。皮膚に張り付く様は肉体の生々しさを強調し、肉体の外側を覆うビニールが微かに揺れ動き、光を反射し輝きを放つ様は、呼吸を繰り返し行う人間の存在を明らかにさせ、また生の美しさを際立たせてくれる。
暗闇の中で鳴り響く「あ」という音は、映像の中で始終鳴り響く。この音を作者は鳴き声とした。低音で小さな鳴き声もあれば高音の大きな鳴き声もある。だが、この鳴き声は共通して、自分自身がここにいるという主張しているかのように見受けられる。一定のリズムで刻まれるこの音は、人間の心拍数のようでもあり、映像の空間内で響くことに留まらず、次第に鑑賞者の身体の中にまで響き渡ってゆく。いつしか、これらの鳴き声と自分自身の心臓の鼓動がリンクしていくことに気付かされ、私たちは不思議な心地よさに包まれることだろう。映像の内と外の緊張関係ともいえる距離感を作者は巧妙に飛び越えさせてくれるのだ。
「人は人ごとに違ってて、おんなじ人はいない。十人十色。」と作者がいうように、映像に映される人間は皆、身体の造り、皮膚の色といった外面性に限らず、性格などの内面性も異なる。だが、私たちがスーパーに並ぶ肉を見つめたときと同様に、ここでは肩書を取り払った一人の人間としてまず、それらを見つめることとなる。普段、ここに映る人間たちは社会の中で「女性」と区別され、誰かにとっての「娘」、あるいは「友達」、「恋人」である。しかし、ここで重要なのは、個々の人間を取り巻くものを見つめる前に、生きる人間そのももの存在を見つめ直すことだ。彼女達となんら関係を持たない鑑賞者にとって、果たして彼女達はどのように映るのだろうか。
生きる人間の姿を見つめる、というわたしたちの体験こそが、この作品の本質にほかならない。目の前に映る人間たちの姿をしかと目に焼き付けてほしい。
まるやまさとわ
写真・ミクストメディア・インスタレーション
東京造形大学造形学部彫刻専攻領域3年
2018
・いのちの塔
・いまでもわたしは
・カワキ/ウルオイ
2019
・オレンジ色の記憶
・まち
・10seconds
2020
・ベタすぎるベタ
・真夜中の音
・How much is this sculpture?
受賞歴
2019 新進アーティスト作品展vol.18 佳作
2020 市民公募夢美エンナーレ 入選
沢井ぼたん
東京造形大学絵画専攻在籍
この作品に対して、初めは女性のパッケージングされた性についての印象があった。
暗闇の中から浮かび上がる乱雑にラップに包まれた下着の女性たちが、棒読みの「あ」と意味のない声を出すことで記号として消費される女性性を描き出しているように思えた。
しかし作者と関わっていくうちに画面から見たエロティックさとは違うあるがままの女体への意識があることに気づく。
作者の中では自然と【作者自身の性=女体=人間の体】という図式ができていて、自分の体が観察対象であり、生活に根ざした観察を表現している。男体への興味の無さもそれが理由で、“自分は自分である”という完結した気持ちがあるからこそ興味がないのではないだろうか。
そして人が人を語る時、大抵は個性や社会の立ち位置、人との関わり合い方を提示することが多いが、この作品にはキャラクター性やメッセージ性を持たせて表現することはない。
ただそこにあるのは個人ではなく肉体で、他者の肉体を提示することによって作家自身の肉体を重ね合わせ提示している。
沢井ぼたん
東京造形大学絵画専攻在籍
パフォーマンス、映像
作品
おしゃべりなたまごやき〜自分で自分を許すこと〜 合作:龍野知世(2019 映像)