DANCE AND MEDIA SEOUL
Cultural Mix from Tokyo
2004/11/23-25



DANCE AND MEDIA SEOUL / Cultural Mix from Tokyo

2004年11月23日〜25日
 
プレゼンテーション/飯名尚人
レクチャー/松尾邦彦(CMprocess)
通訳・コーディネート/Hyojung Seo (DMJ/Seoul、Curator)
会場/アートセンター NABI、HAJAセンター、IDAS



nabiキュレーターのHurさん
23日
〜キュレーション組織の可能性〜

空港に着いてすぐに移動、『アートセンターnabi』にてレクチャー。「DANCE AND MEDIA SEOUL / Cultural Mix from Tokyo」というプレゼンテーション&レクチャーです。DMJの自己紹介と東京のメディア・パフォーマンスの状況を紹介しました。
イヴェントの内容はこちら

nabiは、韓国の通信会社SKテレコムのビルの中にあり、メディア・アートのキュレーションを専門にやっている組織。展示スペースなどは持っていないですが、メディア・アートのキュレーションとしてはとても有名。場所を持たない、ということが時には柔軟な動きができる最大の武器でもあります。キュレーション、という本来の能力が発揮できます。


韓国では、現代アート、メディア・アートがブームのようでしたが、メディア・ツールをパフォーマンスに使うという事例はまだまだないとのこと。レクチャーに集まってくれた人は、ダンサー、建築家、映像作家、音楽家など様々で50名ほどで、質問もいろいろと出ました。

BCWWが開催されたatセンター


HAJAセンターの学生メッセージボード


レコーディングルーム


映像編集ルーム
この他にも、デザイン、服飾、ダンススタジオなど完備




案内してくれたHAJAのディレクター、sahaさん




24日
〜教育、社会、芸術の関係〜

昼は、ソウルで行われている『BCWW』という映像展示イヴェントに参加。世界中から放送向け映像コンテンツがあつまって、アニメ、映画、TV番組、ラジオ番組などが展示されています。バイヤーはこのイベントで、実際に放映する作品を買うわけです。「冬のソナタ」ブームでもお分かりのように、メディア・コンテンツは国益を左右するくらいパワーを持っています。そのせいもあってか、いろいろな映像コンテンツが集まってきています。ダンス映像での出展はDMJのみ。謎の団体として認知されることを祈ります。


夜は、ソウル市が運営している『HAJAセンターhttp://www.haja.net』でレクチャー。集まってくれた学生は、映画、演劇、WEBデザイン、建築などジャンルも様々。
HAJAとは「なんかやろう」という意味だそうで、ここは日本でいう「職業訓練学校」。正式名称は「ソウル市青少年職業体験センター」です。ところが、なんとも自由な学校で、施設の中には劇場、音楽スタジオ、展示スペース、ダンススタジオ、映像編集室、レコーディングスタジオなどなど、なんでもあり。学生は自由に使えます。
一番面白いのは、「アートを職業にする」ということをみんながやってるということ。「美術学校」ではなくて「職業訓練学校」なのです。名刺のデザインなども、学生がここで作って、売ったりもしています。HAJAセンターで自信をつけた学生は、すぐに辞めて社会に出てもOK。卒業することがこの学校の目的ではないわけですね。
何年いなければいけない、とかそういうこともないし、先生と生徒という関係も強くなく、お互いにニックネームで呼び合うような関係。お互いが情報を提供しあって、クリエイションが進んでいくシステムです。
グループワークの可能性やアートとビジネスの可能性を、こういう若い子たちが実践しているというのは、ものすごいことです。なにしろみんな熱心。ところが先生の話では、「つまらないと全然ついてこない」そうです。自分の為になるかならないか、も学生が自分で選択するということ。教える側にとっては恐いですねー。DMJのレクチャーは興味を持って聞いてくれたようです。質問もたくさんありました。
どの部屋に行っても、お菓子とジュースが置いてあって、ワイワイと作業。我々もお菓子を食べながらプレゼンテーションしました。


12月には、HAJAセンターの創立記念日があって、そこでメディア演劇「不思議の国のアリス」を上演するそうです。アリス役の女の子もかわいらしい。今は作品制作のことでみんな頭がいっぱいの様子。レクチャーが終わってからも集まってミーティングしてました。
ちなみに、DMJ/Seoulのキュレーター、Seoは、ここでもワークショップなどをしています。

DMJでは「廃校」を使ってワークショップをやってきましたが、やっぱり「生きてる学校」でワークショップしたいですね。びっくりすることは、こういう自由な制度を取り入れた学校を「ソウル市」が運営しているということ。一歩踏み間違うと、教育現場においての「自由さ」は凶器や怠惰にもなりえますが、そのバランスがとれているように思えました。畳の部屋があって、聞いてみたら『寝ながら勉強する部屋』だそうです。自由過ぎ。
気をつけなければいけないことは、この「自由さ」という部分だけを都合よく模倣して、同じような施設を東京に作っても、おそらく機能しないでしょう。HAJAセンターが成功している理由は、もっと別の戦略があるはずです。そこはまだまだリサーチすべき。
HAJAセンターではワークショップや実際のパフォーマンスも出来るので、次回はHAJAセンターの学生たちと作品作りワークショップができそうです。

IDAS概観

松尾邦彦氏(CMprocess)のプレゼンテーション

25日
〜説明すること、プレゼンテーションの必要性〜

道に迷っていたら、小学生が道を教えてくれました。でも全然言葉が分からず、彼のジェスチャーをたよりに歩いていく...。
サムジースペ-スhttp://www.ssamziespace.com/』に到着。多目的スペース、レジデンススペース、ギャラリー、カフェがあるビルです。6名くらいのアーティストが常に滞在して、作品作りをしています。ひとまずアポなしで、事務所に行ってみると快く話を聞いてくれました。東京のメディア・パフォーマンスの映像をいろいろ見せたら、とても喜んでくれました。ワークショップや作品作りが出来る場所は重要です。
6階建てのビルの1階にはカフェ、2階には多目的スペースとメインギャラリー、3階にもギャラリーがあって、その上にはレジデンスルームとオフィス。サブカルチャーの発信地といった感じの実験的なクリエイションを展開していました。この日もギャラリーでワークショップをやっていました。


夜は、『IDAS(International Design School for Advanced Studies)http://www.idas.ac.kr/index.htm』で、松尾邦彦氏のCMprocessレクチャーを見学。ここは大学院なので、かなりみんな真剣。質問も多く、核心に触れるものも多かったような気がします。「ネットワーク型の作品作りの感動した」という学生が多く、担当の教授も相当気に入っていた様子。
IDASは主にインダストリアルデザイン、グラフィックデザインなどを教えている学校。メディア・アートについても講座があるようですが、まだまだ充実していないとのこと。



「コンテンポラリー」という名のつけられてしまうアートワークの多くは、「難解」「つまらない」という印象が強くなってしまいがちです。DMJが思うことは、「であれば、説明して、解説すべきだ」と。おそらくアーティスト側からは「作品をアーティスト本人が説明するなんて、ナンセンスだ!」とお叱りを受けることは分かっているものの、「勘違いによるミスコミュニケーション(mis-reading the concept/code)」だけは避けなければなりません。もちろん「説明の仕方」が重要です。

『DANCE AND MEDIA / Cultural Mix from Tokyo』は、単に作品を見せて、作品を売ることだけを目的とせず、なぜこの作品が日本で生まれて、DMJがなぜこの作品を紹介したいのか、というDMJのコンセプトと思想を伝える必要があります。面白いかつまらないか、の前に、まずこの時代に必要な発想、というものに注目します。
 
〜課題は、『Live Information』の構築〜

ソウルは、アートへ関心がものすごく高い場所でした。同時にテクノロジーも発達しています。Samsung、LG、SKテレコムなど、インフラを作れる大企業が「デザイン」に目を向けているからかもしれません。そこには、テクノロジーとアートをどう結び付けるか、という日本と同じ課題を持っています。何を見せたいのか、何を表現したいのか、コンセプトは何なのか、というアートの存在価値をテクノロジーと絡めて、面白く、カッコよく見せたい、という姿勢が分かります。そのノウハウを東京に求めている、ということも事実です。ですが、決してソウルは東京に負けていません。オリジナリティのあるものが溢れています。そしてなによりも「探究心」の強さと体力、生命力がある。ブランドもののパクリ商品が多いというイメージが強いかもしれませんが、裏を返せば、いいものをパクることは、モノ作りにおいては重要なプロセスなんじゃないか、と。パクリをそのまま売るのはダメですが。
隣の国で顔も似てますし、これだけ日本から韓国へ足を運ぶ人が多くなった今日ではありますが、実はメディアやアートに関する情報交流はまだまだでしょう。その情報というのは、「どういう人がどういうことを考え、どういうことをやっているか」という『ライブな情報(Live Information)』なんじゃないか、と思います。
二国間の政治的な問題は正直よく分かりませんが、パフォーミング・アーツを通じて、なんらかのコミュニケーションが生まれること、なんらかのコラボレーションが生まれることが重要です。
 
2004/11/28