REPORT
post theater


[LINK]
ポストシアター(日本語サイト)
http://tokyo.posttheater.com/
ポストシアター 通信講座 『適者生存』
舞台芸術制作におけるアイデア・ディベロップメントとクリエイティブ・プロセスを育成するオンラインワークショップ

ベルリンと東京がリアルタイムにリンクするワークショップ説明会
 
飯名尚人 (Dance and Media Japan) / 1 SEP2006
2006年8月30日、ポストシアターワークショップ『適者生存』説明会が開催された。
ポストシアターは、昨年より東京オフィスをオープンさせて、日本での活動を積極的にしていく方針だ。
とはいっても、年間10ヶ月以上は各国でのパフォーマンスやレジデンスなどで多忙のメンバーを日本に拘束させるのも不経済だ。なぜならば、日本からはどこに行くにも飛行機で移動しなければならないし、リハーサルスタジオや開発のためのアトリエもその家賃だけでクビが回らない。ベルリン事務所は広いし、近隣国への移動もわりと楽だ。
しかし日本の観客に見せたい作品はいくつもある。そのためには、東京オフィスの活動ももっと活発にしていかなくてはならないのだ。

もっとインターネットを使おう

そこで思いついたのが、ビデオチャット。もちろん、できればポストシアターに来日してもらい、ワークショップをするのがいいのだが、そうそう簡単に予算も作れない。仕方ない、ビデオチャットだ、というのが今回のきっかけ。最近は英会話とかもビデオチャットやテレビ電話で行われている。大学機関でも遠隔授業には力を入れ始めている。大学での遠隔授業は、出席率のカウントがしにくい、という理由でなかなか実現していないようだし、規模が大きくなるため予算もかかる。しかし、小規模のコミュニケーションツールとしては、インターネットによる国際電話やビデオチャットは十分な利用価値がある。


ベルリンと東京で、顔を見て話す

「では、ベルリンのポストシアターを呼んでみましょう」ということで、TVモニターに登場したのは、マックス・シューマッハーと棚橋洋子。ベルリンは昼の12時、東京は夜20時だ。
マックスによる今回のワークショップ 『適者生存』のコンセプトの解説がスタートした。なにしろ奇妙な体験だ。ベルリンと東京で、レクチャーしたりディスカッションしたり、しかも小規模でローコストで出来てしまう。各国のアーティストとこうしたツールを使って繋がっていくことは、今後もっと当たり前のことになるだろう。顔を見て話すことで、相手のことを考えて、敬意を払ってコミュニケーションをすることができる。

説明会でのレクチャーの内容は、新作の『Figure 8 Race』を例に、どのような物語で、どのような背景があり、さらに実際の演出としてどのようなビジュアル化がされていったか。
ポストシアターの作品がメディアアート寄りでも、演劇寄りでもない、まったく新しい基盤で作られていることが分かる。


必要なものを使う、という方法論

ポストシアターは映像を使った作品が多い印象もあるが、実際はそんなことはない。非常にアナログな作品も多いし、インスタレーションなどもある。
「この技術を使いたいがために、作品を考える」ということはなく、「この世界を表現したいから、この技術が適しているのでないか?」というテクノロジーの使い方をしていく。なので、「物語」がきっちり存在していて、アーティスト側から観客へのしっかりとした「見せ所」が用意されている。それは、アーティストが観客にすべき「サービス」だ。この「サービス」のない作品には、観客はお金を払いたくないだろう。ポストシアターの作品を観て、「最悪だ、つまらない」と思う人はほとんどいないだろう。ミクスト・メディアというカテゴリーで行き詰っている人や絶対的に新しい体験を舞台に求めている人には、ポストシアターを是非一度は体験して欲しい。そうした作品を作っているポストシアターのメンバーとビデオチャットとはいえ、直接対話できるワークショップは刺激的だ。


とはいうものの、ビデオチャットが目的ではない。

ビデオチャットしたいから、ワークショップをするわけではない。今回のワークショップのテーマは、「自分の脳みその中にあるアイディアを作品化するためのプロセスを徹底的に考える」ということだ。もっと簡単に言えば、「どうやったら面白い作品になるか」だ。
そのためには、いろいろなリサーチや実験が必要になるだろう。いろいろな人とのディスカッションも必要になるかもしれない。今回のワークショップでは、物事の考え方、アイディアの選択の仕方など、ドラマツゥルクという仕事のノウハウを体験できるだろう。


『6 Feet Deeper』も鑑賞

ベルリンとのビデオチャットも無事に終了し(途中、東京オフィスでゴキブリが発生するというアクシデントがあったものの・・・)、昨年11月に日本で上演された『6 Feet Deeper』を鑑賞した。
その後も参加者との雑談が続き、23時までいろいろな話をした。参加して頂いた皆さんと、いろいろな情報交換ができるのは重要なことだ。
ワークショップは12月からスタートするが、オンライン・ワークショップの可能性を知ることのできる説明会となった。




[詳細情報] 参加者募集中です。

ポストシアター 通信講座 『適者生存』
舞台芸術制作におけるアイデア・ディベロップメントとクリエイティブ・プロセスを育成するオンラインワークショップ

2006年12月7日(木) / 12月21日(木) 20時〜22時
2007年1月8日(月) / 1月22日(月) 20時〜22時

詳しい内容と申し込み方法は、こちらへ。