合田有紀と金魚
合田有紀は自宅アパートに金魚畑を作り、卵から育て上げることを日々の生活としている。
100匹生まれて、残る金魚が5匹。生まれた金魚が全滅することもある。
金魚師となり理想の金魚を生み出すことを目指す合田有紀が、自ら育てた金魚・蘭鋳(ランチュウ)と踊る。


蘭鋳
蘭鋳(ランチュウ)は、「世界でこの金魚を持っているのは自分しかいない」という支配欲を持たせる魔性の金魚である。その造形美を競うことから「泳ぐ宝石」または「金魚の究極」とも言われる。1匹数百万円という高値もつく。かなりデリケートな品種であることから他の金魚とは別格に扱われている。鰭が小さく、寸胴で游泳力が弱いことなど、飼育には特別の注意が払われる。



『金魚撩乱』
岡本かの子の小説のタイトル(1937年)。

「今日も復一はようやく変色し始めた仔魚を一匹二匹と皿に掬い上げ、熱心に拡大鏡で眺がめていたが、今年もまた失敗か――今年もまた望み通りの金魚はついに出来そうもない。」(小説冒頭より引用)

金魚屋の息子 復一は、幼馴染で高台の豪邸に住む真佐子に恋心を抱くも、身分の違いから屈折した態度で接してしまい想いを果たせない。復一は真佐子のように美しい理想の金魚を生み出すことに打ち込むものの、毎回失敗し続け絶望している。
希望と絶望が共存する、ハッと心を衝くラストシーンは、何度読み返しても美しい。

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http://www.aozora.gr.jp/cards/000076/files/1279_9311.html