Peter Chin 2

ピーター・チン

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ピーター・チン
振付家/ダンサー/音楽家



路面電車の中で不思議なダンスをする東洋人。これが、ビデオダンス作品「ストリートカー」をジャカルタのビデオダンス祭「danc(e)motion」で初めてみたときのピーター・チンの印象だ。本人はジャカルタの映像祭に来ていなかったので会うことが出来なかった。その作品は強烈で、作りこまれた映像と演出。即興性のあるダンスや音楽。なんともいいがたいダンス中の恍惚の表情。作品の舞台はトロント。どれをとっても不思議で、オフビートのコメディー映画を観ているようだった。あまりにも気に入って、日本で開催した2006年の国際ダンス映像祭で上映したところ大好評だったためDVD化して販売することにした。
販売のために何度かプロデューサーとやり取りをしたものの、ピーター・チン本人と会う機会がなく、メールで少し情報交換した程度。そのピーター・チンから「モンゴルの帰りに東京に寄るから、会えないか?」というメールをもらい、インタビューさせてもらうことになった。(飯名尚人)

聞き手/飯名尚人、田村洋 [Dance and Media Japan]
2008年8月12日

Q あなたの"multi-disciplinary"な作品つくりとは??

すぐには思いつかないけど、専門的な要素を取り入れた作品作りには興味があります。私はパフォーマンスに興味が有るのですが、パフォーマンスは極めて専門的な要素、それは例えば音楽、美術等のような様々な観点から考えなければならない。同じ専門的な要素を取り入れたものとして、フィルムとか、ドキュメンタリーにも興味があります。特にプロダクトとして完成しているドキュメンタリーが好きです。そのプロセスが好きなんです。プロセスは時にパフォーマンス以上におもしろい。そのプロセスを他の人とどのように共有して、そこを通してどのようにドキュメンタリーするか。ドキュメンテーションは時々、映像をつくるだけで終わってしまいます。私はただのドキュメンテーションでなく、アートフルでおもしろいものにしたいんです。

ドキュメンテーションというのは、作品として反映されますよね。もし僕が記録映像を撮るとしたら、そこに自分の個性も出てくる。僕は記録映像を作る時に、アーティスト達とよく話すことなんですが、単なるパフォーマンスじゃないものを作る。そこでまた、ドキュメンテーションが重要になる。このことはビデオダンスにも同じことが言えます。
ダンスを撮影するけれど、製作者とダンサーが協力しあうことで単なるダンス作品じゃないものが出来上がる。そうすれば1つのアート作品になる。そうやっていくつもの面を何度も重ねていく作業が非常に関心があります。
その面の中にはプロセスがあり、アイディアがあり、すべてつながっている。
そのプロセスとかアイディアを作り出すことに興味があるんです。

Q 楽曲は、ダンスを作った後?前?

この作品(「ストリートカー」)は後に作ったんですけど、時々ダンスを作っている時に、音楽のアイディアが浮かぶ事もある。今は技術が発展してるから後に作ったほうが簡単だし、スムーズですね。
Garnet Willisと仕事をする時はスタジオで映像を観ながらその時々にあったものを作曲します。僕は映像の動きを知っているのから、時々どんな音が良いかもわかるんです。映像を見ていて音を感じることもできるし、実際に音が聞こえてくる。だから、音楽スタジオで音を作ることは、タイミングにあった曲をつくる事ができます。

Q それじゃぁコンポーザー(作曲家)でもあるんですね?

ダンサーでありコンポーザーでもあり、両方。難しいなぁ・・・でもやっぱり両方かな。なぜならどちらも構築的であり、何かはっきりとこうしたいという事があるからです。音は正確なタイミングで正しい音を入れる必要があるけど、スタジオで作業していると、たまに無意識にアイディアがひらめくんです。そのアイディアをまずは試してそれを発展させていく。構成っていう枠組みはあるんだけど、自由なひらめきが大切。だから作曲家であり、構成作家でり、その両方って言えるかな。


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Q 音楽作品はある??

ない。でも作らないとね。
僕はだらしないし(笑)、ダンスで忙しいから。
でも、"Yes"。そのうちCDをつくってリリースしていきたいよ。

Q あなたは若い頃に音楽の勉強をしていたんですよね?でも今はダンサーとして有名ですね。

可笑しいよね。変だよね(笑)。作曲もよくやってるよ。トロントで合奏団があって、彼らは中世音楽やバロック音楽を演奏しているんだ。楽器もその頃の古いものを使用している。僕は彼らに特別に音楽を作曲してモンテ・ベルディみたいなルネッサンス後期のバロック音楽を始めたんです。音楽の分野に戻ってきている。だから今、作曲についてもシリアスに考えています。
もしダンスをする事を1度休憩するとしたら、、、でもそうはしないと思うからなぁ。

Q あなたの作品はユーモアでシリアスですね

僕の作品の基本は似ていますね。構造的で即興的。構造的にするには、非常に明確な物だけでなく、さらに新しいものを解放するため。即興的なものも必要です。もし束縛されすぎなら、エネルギー、しかも新しいエネルギーは出てこない。もし積み重ねたら何か新しいエネルギーが出てくるんです。

Q 映像作品の最終的な目標はなんですか?

テレビ放送ですね。すでにテレビ用のショートバージョンも作ってあります。テレビ用だと、コマーシャルかフォーマットがあるから。このバージョン(DVD化された「ストリートカー」)は展示用のバージョンなんです。ほんとはもっと長かったんです。テレビ用では22分の短いバージョンもあります。