東京造形大学 映画・映像専攻 + Dance and Media Japan

国際ダンス映画祭・松山
特別プログラム 大野一雄を知る。観る。

会場:white-dagdag(ダンススタジオMOGA 愛媛県松山市湊町3-6-1)
 

松山ワークショップ+上映会 レポート
1人の人の歴史を記録映像を手掛かりに、現代に踊り繋ぎ、生のダンスとして残していく
テキスト:高橋砂織(yummydance)
 
 


 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8月26日、川口隆夫さんによる身体ワークショップ「大野一雄を知る」集まったのは、大学生、社会人、ダンサー、ダンスをしたことがない人、など20人。
ワークショップの始まりは「自分の思う大野一雄のイメージを、自己紹介を兼ねて表現」というお題。「どんなのでも良いから、思うように!変なのでも良いよ〜」と、川口さん。一つのポーズをとる人もいれば、突然倒れたり、一方向を指差す人など。その人の中にある大野一雄が参加者によって現れる。生の大野一雄に出会ったことがある人や、映像だけでしか知らない人、ほとんど知らない人も。とにかく頭の中にある大野一雄という人を自分の中から出してみる。次に、みんなで「胎児の夢」の映像を観る。その中で、3つ自分が決めた動き・形を決めて真似てみる。5箇所に設置されたPCを見ながら、そして川口さんが書いた大野一雄の動きのスケッチを見ながら、選んだ大野一雄の身体の形を切り取る。なかなか思うようにはいかないが、「あ〜かな、こ〜かな」と1人で模索する。コピーをするという作業の始まり。

次に、誰かとペアになり、3種類の形を選び、その形を人と共有しながら言葉にしながら、誰かと共有しながらコピーするという作業に入る。しばらくして、川口さんが場を回り、悩んでいるチームへ手がかりを伝えて回る。川口さんの身体と言葉を使って形の解釈を伝える。ちょっとした花の持ち方ひとつ、関節の入れ方ひとつ、力の抜き方入れ方などで、その形に一旦近づく。川口さんの身体を通すと、みるみる映像の中のその形が表出してきて、悩みながら向かっていた問題に「なるほど〜」と答えをもらった感じ。でもだからと言って、それが自分ですぐにできるかと言ったらできるわけではない。また振り出しに戻る感じ。わかったのにできないもどかしさ。何度も何度も繰り返し、考え試してみる時間。

次に、その3つの形を自分なりに繋げ、動きにしてみる。1人へ戻る。例えば、その場所へ行きにくい感じだったり、繰り返してみたり。回ってみたり。やったことのない形を自分の身体に落とすことによって、次への形の場所への移行は今までに行ったことがない身体のルートを辿るようなイメージ。没頭していて時間は、あっという間にすぎる。
そして、お互いを見合う。それぞれのその人なりの向き合い方がとても興味深い。たくさんの大野一雄らしきものがその場に蠢く。全く一緒ではないけれど、何かが共通のダンス。それはそれで興味深いし、その人の向き合い方が、あらゆる角度から見えてくる。ワークショップの最後に、川口さんがソロを踊る。大野一雄の映像とともに。見入ってしまい、終わってほしくない贅沢な時間。なんとも言えない気持ちがこみ上げてくる。同時に、この作業、この振り付けで踊るということを、積み重ねてきた時間のとてつもない大きさに驚く。大野一雄という1人の人の身体から生まれた踊りが、「録画する」という事により残され、「川口隆夫」という人が、映像を通して動きの奥を研究し、その人の身体に置き換え、落とし込み、今ここにいる人の身体に落と仕込まれて、そしてダンスになる瞬間。知らなかった世界、味わったことのない世界をひとすくいすくいあげる時間。 
 
ワークショップの後、休憩を挟み、上映会「大野一雄を観る。」へとうつる。

①舞台記録映像「ラ・アルヘンチーナ頌」(1977年初演)
(約70分Video Information Center /Repository:Keio University Art Center Archives)
②短篇映画「愛の夢」(7分 監督:飯名尚人 出演:大野慶人・川口隆夫)
 
1977年に上映された大野一雄の舞台「ラ・アルヘンチーナ頌」のオリジナル記録映像を上映。土方巽が演出した大野一雄の舞台は、土方巽のアイディアと大野一雄ののダンステクニックが見事に融合した傑作。大野一雄71歳の時のソロリサイタルを記録した貴重な映像。
 
上演後、飯名尚人監督と、川口隆夫さんによるアフタートーク大野一雄さんがどんな人だったのか、そしてその舞台はどのようにつくられていったのか、チャーミングな大野一雄の一面を知る話や、飯名監督と川口隆夫さんが現在この試みを行うようになったきっかけ経緯などを聞く。1977年の舞台作りは大変であっただろうことや、当初お弟子さん達と踊る作品でつくっていたものが、途中から土方演出で大野一雄ソロに変更になったというエピソード、自由に踊ってしまう大野一雄に対して、舞台袖で「先生ー!動かないで!」 と土方巽が指示を出していたという、なかなか知る機会がない裏の話まで。また、飯名監督と川口さんは、ダンス作品をコピーし舞台化するというのを今までした人がいなかったので、これはダンスのアーカイブとしてのひとつの試みとなると思い、取り組んだということ。そして、このことが注目され、次第に話題になっていき、今のような世界ツアーができるような状況にいたったことの経緯や、川口さんはとにかく自分をゼロにして大野一雄の踊りの間合いだけを忠実にコピーする事だけに集中しているという話など。大野一雄のダンス映像から踊りを自身のカラダに移して、振り付けを起こすとき、映像に映る身体のカタチを詳細にスケッチをして(膨大な量)、それを再現しながらつなげていく作業を通じて、映像を見ながら自身の身体を動かしていく作業だけでは得られない、動きの印象や特徴や空間へのアプローチを探していった。という話など。話は、聞いても聞いても尽きない。実に興味深い時間。 1人の人の歴史を記録映像を手掛かりに、現代に踊り繋ぎ生のダンスとして残していくことの魅力をひしひしと感じた1日だった。

東京造形大学 映画・映像専攻 + Dance and Media Japan

国際ダンス映画祭・松山
特別プログラム 大野一雄を知る。観る。

参加費・入場料:無料
会場:white-dagdag(ダンススタジオMOGA 愛媛県松山市湊町3-6-1)

 
103歳まで踊り続けた舞踊家・大野一雄。土方巽、大野慶人と共に、舞踏を世界に切り開きました。
ワークショップでは、川口隆夫が大野一雄の踊りを丁寧になぞり、上映会では大野一雄の貴重な記録映像を観ます。
 
2018年8月26日(日)
14:00-17:00(15分前受付) 身体ワークショップ 「大野一雄を知る。」
18:30-20:30(15分前開場) 上映「大野一雄を観る。」
 
ワークショップ参加費・上映入場料:無料

参加予約
メールにてお申し込みください。
申込内容によって件名を
 「ワークショップ 」
 「上映」
 「ワークショップ+上映」のいずれかとし、
①お名前 ②人数 ③電話番号 を明記の上、 yummydance_live@yahoo.co.jp までお送りください。
こちらからの返信をもってお申し込みは完了となります。2~3日経っても返信がない場合は、お手数ですがお問い合わせ下さい。
※携帯アドレスからのお申し込みの場合は、メール受信設定をご確認の上お申し込みくださいますようお願い致します。
 
お問合せ:090-2894-3535(高橋)

 
 
 
 

大野一雄 舞台記録映像「ラ・アルヘンチーナ頌(1977年・初演)

 

川口隆夫 ボディー・スカルプチャー・ワークショップ

 
 
 
 
 
 
14:00-17:00 身体ワークショップ 「大野一雄を知る。」
ボディー・スカルプチャー・ワークショップ
講師:川口隆夫
定員:先着20名
 
その舞踊家を知るには、その踊りを踊ってみるしかないのではないか?
大野一雄の踊りを完コピするワークショップです。
忠実に再現することで、再発見できる大野一雄の踊り。川口隆夫の舞台作品「大野一雄について」は、舞踊家・大野一雄の踊りを、残された記録映像から忠実にコピーして、再現するという方法で制作されました。「これはコピーかオリジナルか!?」という議論を巻き起こし、2017年ニューヨーク・ベッシー賞にもノミネートされ、現在も多くの公演を行なっています。
これまでに大野一雄の精神を分析した研究はあったものの、彼の踊りそのものを追求したものはなく、川口隆夫がその第一人者とも言えます。
講師に川口隆夫を招き、貴重な大野一雄の映像を見ながら、参加者にその動きを忠実に詳細をコピーして、踊るというワークショップ。
 
 

川口隆夫からのコメント
誰かのダンスを「完コピ」するというとき、やっぱりもっともコピーし甲斐があるのは大野一雄をおいて他になかなか思いつかない。あの独特の風貌と踊り。まさに「ひと匙でしびれさす、劇薬のダンス」。
さて、それを「コピー」するわけなのだが、がんばってコピーしようとすればするほど、実は、ますます似てないところ、違うところが際立ってきてしまう。「そっち」を見せたいのに「こっち」が見えてきてしまうパラドックス。文字通り、「他人の振り見て我が振り直せ」とはこのことか。かなりマニアックな作業だけれど、ハマれば奥が深くて面白い。自分と向き合うにはメチャもってこいのワークです。

 
 
18:30 - 20:30 上映「大野一雄を観る。」
1977年に上演された大野一雄の舞台「ラ・アルヘンチーナ頌」のオリジナル記録映像を上映。土方巽が演出した大野一雄の舞台は、土方巽のアイディアと、大野一雄のダンステクニックが見事に融合した傑作である。大野一雄71歳の時のソロ・リサイタルを記録した貴重な映像。近年マスターテープが発見され、新たにデジタル化されたデータでの上映。
 
①舞台記録映像「ラ・アルヘンチーナ頌(1977年・初演)」
 (約70分 Video Information Center / Repository: Keio University Art Center Archives)
②短編映画「愛の夢」(7分 監督:飯名尚人 出演:大野慶人・川口隆夫)
③アフタートーク:飯名尚人・川口隆夫
 
 
 
解説・紹介
大野一雄
1980年73歳にして世界デビューし、103歳で逝去するまで現役で踊り続け、ピナ・バウシュをはじめとする世界の名だたる振付家に大きな影響を与えた。体育教師として神奈川県横浜市の捜真女学校に体育教師として勤務する傍ら石井漠に師事してモダンダンスを修行。モダンダンス界の中心的存在だった江口隆哉と宮操子による江口・宮舞踊研究所に入所。1938年召集を受け、中国に出征、ニューギニアで終戦を迎える。戦後復員し、1949年に第1回リサイタルを開く。1960年代に土方巽と出会う。1977年「ラ・アルヘンチーナ頌」を発表(演出:土方巽)。1980年捜真女学校を退職。同年フランスの第14回ナンシー国際演劇祭に出演し、1999年イタリアで「ミケランジェロ・アントニオーニ賞」を受賞。2010年6月1日(103歳)死去。
 
川口隆夫作品「大野一雄について」
伝説の前衛舞踊家に寄せる全身全霊の讃歌 ( Los Angeles Times紙掲載)
「魂の踊り」と評された大野の代表作『ラ・アルヘンチーナ頌』(1977年)、『わたしのお母さん』(1981年)、『死海』(1985年)を、パフォーマー川口隆夫が「完全コピーする」という特異な方法で再現した話題作。すでに世界30都市以上で絶賛され、2017年ベッシー賞ファイナリストにノミネート。今年は、フランス、スペイン、タイ、フィリピンでの公演が決定。
 
川口隆夫
ダンサー・パフォーマー。1990年、吉福敦子らとともにコンテンポラリーダンスカンパニー「ATA DANCE」を主宰。96年からアーティスト集団「ダムタイプ」に参加。2000年以降はソロを中心に、演劇・ダンス・映像・美術をまたぎ、「演劇でもダンスでもない、まさにパフォーマンスとしか言いようのない」(朝日新聞・石井達朗)作品群を発表。「自分について語る」をテーマにした『a perfect life Vol. 06 沖縄から東京へ』で第5回恵比寿映像祭(東京都写真美術館2013)に参加。近年は舞踏に関するパフォーマンス作品『ザ・シック・ダンサー』(2012)。『大野一雄について』(2013)は2016年秋の公演でニューヨーク・ベッシー賞にノミネートされ、現在も世界各地をツアーし続けている。1996~98年まで東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(現・レインボーリール東京)のディレクターを務め、英国映画監督デレク・ジャーマンの色についてのエッセイ集『クロマ』を共同翻訳(2002年、アップリンク)。
 
国際ダンス映画祭
Dance and Media Japanが2003年から始めたダンス映画(ビデオダンス)専門の映画祭。毎年200本近くの作品応募があり、その中からキュレーター・プロデューサー飯名尚人が作品をセレクトし、各地で巡回上映している。松山では4回目の開催。
 
東京造形大学 映画・映像専攻
2018年度より映画専攻の名称を「映画・映像専攻」とし、新しい授業として「ビデオダンス演習」「映像身体演習」「ヴィジュアルアート」「クリエイティブ・カウンセリング」「個人制作演習」を開講。身体表現と映画を同時に受講でき、各自の自由な表現をサポートする。今年度はDance and Media Japanと共に国際ダンス映画祭を開催。
 
 
 
主催:東京造形大学 映画・映像専攻 Dance and Media Japan
共催:yummydance
協力:有限会社かんた 大野一雄舞踏研究所 NPO法人ダンスアーカイヴ構想