インタビュー #6
振付・出演:寺田みさこ 「違和感」っていうのが、新しい扉を開く鍵になる

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<音楽:西松布咏>×<ダンス:寺田みさこ>×<作・演出・映像:飯名尚人>の「アジール」。京都:初音館スタジオと黒谷・永運寺でのリハーサルを終え、振付家、ダンサーとしての両方の役割の中で、今回の作品製作について語って頂いた。

インタビュー収録:2011年2月21日@京都 初音館スタジオ
聞き手:飯名尚人
収録:水野立子(JCDN)
テキスト聞き起こし:川那辺香乃

今回の作品の題材で「煙草」「縁切寺」「恋愛」とか、そういうものが使われています。どういう風なアプローチで作品に取りかかりますか?

_MG_4688CR2.JPG写真 清水俊洋 「情念」みたいな言葉が分かりやすく浮かぶのですが、なかなか自分とは直結しない。私の身体の質感とも、ある違和感があるような気がするんですね。この「違和感があるなあ」って感じていることに、可能性を感じています。自作自演(自分で振付けて、自分で踊る)ってほんとに難しいと思っていて、自作自演するときの課題としては、どこまで<私の身体>を私から突き放せるかだと思っています。
自作自演の場合、まず稽古中に自分の踊りをビデオカメラで撮って、自分で編集するような作業をする訳ですけど、その時に、その画面に映っている自分に、自分がどういう要求を出せるか。私ではない別の誰かに対して「ここでもっとこうして」って言うのとは、全く違う意識が働きますよね。例えば学生とかと作品を作っている時は「あ、それちょっとこうやってみて」「こっちの方向行ってみて」とかってポンポン稽古を見ながら次の一手が出てくるわけですが、自分自身を相手にすると色々とややこしい意識が働いちゃうんですよね。
だから今回は、演出家の手を借りつつ、自分自身の作業としてもその事をやりたいと思っていて、その時に、「違和感」っていうのが、新しい扉を開く鍵になると良いなと思います。

恋愛、というようなテーマって、コンテンポラリーダンスという時代になってから、あまり直接的には見なくなっていると思うんですが、どうなんでしょうね。恋愛というのは、カタチはどうあれ誰しも体験のあることですけども。作品のテーマというのは、自分に近いことの方が作りやすいですか?それとも、遠いことの方が作りやすいですか?

DSC_9588.JPG そのテーマ自体が、あえて自分とは距離があるものの方が面白いなって思うんです。それとどうやって自分と繋げるか、を考えますよね。「自分探し」というと、最近はどちらかというとマイナスの意味で言われることが多い気がしますけど、その要因として、自分の内に自分を探しに行っちゃうようなテーマ設定の仕方があるのではないかと。自分探しをするには遠くへ出かけて行ったほうが、新しい発見があると思うんですよね。ただ、テーマが自分と遠いなと感じている場合でも、実際にパフォーマンスするときは、自分自身ときちんと接続されないと絶対成立しないって思うんですよね。成立しないし、多分伝わらない。
 人としてのリアリティのある状態で、舞台上に立つこと、つまり自分の中でふとリンクするようなことが起こるのが面白いなと思っています。
 恋愛って言っても、すごく幅がありますよね。駆込寺、縁切寺って言うと、今の社会で考えるとDV問題とか。どういう切羽詰り方なんでしょうね?いろいろ寄り道したり、全然違う方向にジャンプしてみたりする必要がある気がしています。

縁切寺の話は、当時の映像があるわけでもないですから、その当時の男女の関係を想像するしかないですよね。都合よく歪曲させることもできます。勝手に想像して作れるおもしろさがありますよね。
そして、観てくださった人が、「コンテンポラリーダンスと三味線のセッションね」となるのが、いちばん避けたいですよね。この公演は、そうじゃないんだ、っていうことがしたいですね。振付家としてのアイデアをみさこさんが出してくれて、変な引き出しで対抗してくれるといいなあ、と期待しています。

 はい、努力します(笑)。3月のデモンストレーション公演までにどこまで出来るかは、やってみながらですけども…。作り込んで行く作業が必要だと思うんですよ。作り込んでいくっていうのは、振付けをしていく、つまりひとつずつジャッジしていくこと。そうしてそのシーンの色合いみたいなものが振付け作業の中でクリアになってくる。
 このシーンは全体にピンクっぽいよなっていうような事がもう少し実感できてきたときに、「ほしいのは、この色!」とか、そういうことが、より確かに見えてくる。本公演に向けては、そういう作業をしていきたいと思っています。

それの作業がないと作品にならないですしね。映像のシナリオを書くことと、振付を考えていくことは似ているかなと思いました。丁寧に作り込んでいく作業ですよね。

 発見と決断する力って相当のパワーが必要やと思うんです。私、すごい慎重なんですよ。石橋を叩いて、さらにじっくり眺めてみる、って感じなんで、なかなか決断するのにも時間がかかるんですね。
 もちろん直感力でジャンプすることもあるけど、裏付けがないとなかなかジャッジできない。だから、面倒くさい時間のかかる作業をやらないと見つからないし、そういうことも自分に対して引き受けていかないとしょうがないと思っています。





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